タクシーでマンションに乗り付け、部屋に入ると私は言った。
「パパ、鏡を閉じて」
パパはすぐ理解してくれた。
私は、レイプされた汚らしい身体を見られたくなかった。
パパがリモコンを操作して、木製のシャッターを鏡に被せて行った。
部屋中の天井の鏡、壁の鏡、浴室の壁と床の鏡が、鏡という鏡がシックな木肌で覆われた。いつもの快楽に満ちた部屋は、エロスを閉じて、落ち着きのある優雅な癒しの部屋となった。
パパが照明を暗くしてくれた。
私は先にシャワーを浴びた。
熱いシャワーを浴びると、あの汚らしい男達の感触が洗い流されていく感じだった。
バスローブに身を包んで浴室を出た。
リビングに入ろうとするとき、パパが電話しているのが聞こえた。声からして、電話の相手は遼介さんだった。私はなぜか本能的に密かに聞き耳を立てた。
「さっき、病院から頼んだ件はどうなった?」パパが言った。
「先ほど、熊谷のお灸は終わったよ」
「そうか、早かったな。」
「俺のネットワークはパワーとスピードが売りだよ」
「どの程度のお灸だ」
「死にはしないが相当なものだ。もしかしたら、明日の朝のニュースに出るかもしれない。」
「警察の手がそっちへ伸びたりしないか?」
「完璧だ。プロがやったからな。それと、由香里ちゃんのレイプを撮った動画はまだ投稿されていなかったよ。そのスマホはどぶに捨てた。だから、安心していいと由香里ちゃんに伝えてくれ。」
「ありがとう」
「大切な由香里ちゃんのためだ。」
そう言って遼介さんは電話を切った。
私は聞かなかったふりしてリビングに入った。
パパがそばに来て、肩を優しく抱いてくれて言った。
「少し食べようか?」
「あまりほしくない」
「少し食べなきゃ、回復が遅くなるよ。ここへ来る途中、好きな焼き肉を用意したんだよ」
「嬉しい」
「オーケーイ」パパはそう言って、焼き肉弁当を居間のテーブルに広げた。
肉は口の中で柔らかく溶けるようだった。
私は、次いで、少量のウイスキーを飲んだ。
ウイスキーが心と体を優しく温めて行った。
暫くすると、眠気が襲ってきた。精神安定剤とウイスキーのせいだと思った。
「先にベッドに入ってます」
私はそう言って、先に寝室に向かった。
「俺は少し、仕事関係の電話をするよ」パパが言った。
暫くすると、浅い眠りの中で、私は後ろからパパに抱かれていた。
パパも裸になっていて微かに石鹸のにおいがした。パパもシャワーを浴びたようだった。
パパがバスローブの中に掌を忍ばせてきて、軽くそっと乳房を包みこみ愛撫した。
私のお尻のあたりで、硬くなったペニスがアナルに触れた。
その感触が、一気に恐怖の感情をよみがえらせた。
無理やり開かされる脚、獣の舌のぬめり、私の中に侵入して暴れる不気味でおぞましいペニス、私の口をこじ開け喉の奥まで襲って来る、もう一つの汚らしいペニス・・・・
全身に恐慌が走った。私はパニックに陥った。
ギャーーー
と叫ぶ声が自分にも聞こえた。
私は悲鳴をあげ、飛び起き、ベッドから飛び出し、ベランダ側の全面ガラス張りのドアの下に身を守るようにうずくまった。
ハア ハア
と、大きく喘いだ。涙が出て、歯がガチガチとなり、体がビクビクと震えた。
パパが飛んできて、私の横に跪いて、優しく小さな声で言った。
「ごめん、怖かったんだね、セックスする積りじゃなかったんだよ、自然に触れちゃっただけだよ」
「分かってるわ、パパ、ごめんなさい、私の体が、勝手にパニックになったの」
私は泣きながらパパの胸に顔を埋めた。
暫くそのままでじっとしていると、体と心が落ち着いてきた。
「じゃあ、今夜は別々に寝よう。俺はリビングのソファーで寝るよ」
「いやよ」
「その方がいい、由香里の体はまだパニックに陥ってるみたいだ」
「そうじゃないの、パパと寝たいの、一緒にいたいの、一人は嫌なの」
私は懇願するように泣いた。
「分かった、それじゃあ少し離れて、手を繋いで寝よう。そうしたら、一人じゃないね」
「うん」
と、短く頷いた。自分が幼児帰りしたような幼い声だと思った。
私はパパと手をつなぎ、パパを感じながら眠りの淵に落ちて行った。