リゾートホテルの壁一面のガラスに雨が一筋走った。
雨が来る
雨が来る。
沖縄のスコールがもうすぐやって来る。
ホテルのテラスの彼方。
南シナ海の空に巨大な積乱雲がせりあがっている。
積乱雲の先端は虚空に突き刺さり白熱して輝き、水平線に接している底辺は真っ黒に煙っている。
真っ黒な水平線の彼方から遠雷が響き、稲妻が走っているのが見える。
もうすぐここに驟雨が来る。
「ウーン」
剛一パパがシーツの中で声を上げた。
心地よさそうな声だった。
パパの手が何かを求めて宙を彷徨った。
やがてパパの手は隣にいる私の体を探り当てた。
手は、蜥蜴のように私の体を滑り、裸の腰を撫で、尻に絡みつき、腕をよじり、私を捕獲し、強い力で私の体を絡め取った。
私をシーツの中に引きずり込み、乳房を揉みしだき、空いた手で、花唇の割れ目をなぞった。
私の体は勝手に反応し小さなうめき声をあげた。
窓の外で稲妻が走り、数秒おいておどろおどろしい雷が鳴った。
数秒して、ザーッと驟雨が窓ガラスを襲った。
「愛してる 由香里」
「私も」
パパが激しく私の唇を吸った。
私もそれに応えてパパの舌を吸った。
パパが私の手を握って、自分の蛇身に導いた。
私は熱くなっている蛇身を軽く握った。
蛇が掌の中で鎌首をもたげた。
私は緩やかなリズムで蛇身をしごいた。
「夢を見ていたよ」パパが言った。
「何の夢?」私が訊いた。
「ライオンの夢だった。黄金のライオンの夢だった」
驟雨の中で、私は幸せだった。
きっとパパもそうだったと思う。