ルーカスや猛と別れた後、私とパパは秘密のマンションに籠った。
会食のお酒は美味しく、何杯も飲んでしまって、結構酔ってしまった。
その夜、マンションの鏡の浴槽でパパと相当淫らなセックスをしたと思うが、はっきり覚えていない。
「今夜はお泊りだ」
パパがそういったのは覚えている。
私は嬉しい気持ちでいっぱいになり、シーツを被ってパパの横に滑り込んだ時までは覚えている。
朝、カーテンから漏れる光の中で眼が覚めると、パパが居間で電話していた。
スマホから漏れ出て来る相手の声は遼介さんだった。
「俺は近々日本を離れるよ。検察の防衛省へ調査が厳しくなって来たからな。俺の名前は未だ出ていないが、いつ出て来るとも限らない。今のうちに如月会の全てから俺の痕跡を消しておくよ。」
遼介さんのの声は、秘密が一杯という感じで、ぼそぼそとして掠れていた。
如月会とは遼介さんが事務局長を務めるNPO法人で、防衛相の汚職問題に絡んで、最近その名前が時々テレビなどで報じられていた。
「その方がいい。実は俺も近々、欧州支社長としてフランスへ行くことにななった」
パパが言った。
「フランスか。いい国だ。だが、今は危ない国だぞ」遼介さ案が言った。
「分かっている」
「俺はアメリカへ飛ぶ。ペンタゴンの核心部分とのコネクションを作る予定だ」
「アメリカへはいつ発つんだ」
「来週に予定している」
「気をつけてな」パパが言った。
「お互いにな」遼介がそう言って、電話を切った。
私はガウンを羽織ってパパから少し離れて聴いていた。
パパがフランスへ行ってしまうの?
それって別れるってこと?
心の中でいやな疑問が飛び交った。動悸がした。
パパが私に気づいて振り返った。
私は思わず大きな声を出してしまった。
「パパ、フランスへ行くの?」
「聞いてしまったんだね。もう少し後で話そうと思ってたんだけど」
パパはそう言って、私の手を取り、膝の上に引き寄せた。
私は素直にパパの膝の上に腰を降ろした。
パパがガウンの中に手を滑らせて来て体に手を回した。
私も自然に手をパパの首に回して、パパの目を正面から見つめた。
パパは色々説明してくれた。
でも、私の頭の中は、
パパとお別れ
パパとお別れ
という言葉が乱れ飛んでいて、パパの説明は途切れ途切れにしか聞こえなかった。