窓からは気だるい秋の午後の光が差し込んでいた。
美希さんによって蘇った私の中にはエネルギーが満ち溢れていた。
私は書きかけのキャンバスに向かって力強く筆を運んだ。
あの巨大な建造物が天に競りあがっている。
下の方に広がる広大な荒野らしき空間には夥しい数の、蟻のような人間たちが騒ぐように群れている。
建造物の上空には巨大な雲の渦が巻いており、その渦の下部はま真っ赤に燃え上がっている。
ヨーロッパの中世を思わせる構図と色使いを意識した絵だ。
私の描くのは、果てしない高みで歓喜に燃える、私のアクメの姿だ。
完成まであとわずかだった。
途中、少し手を休めて、正輝に電話した。
正輝とはほぼ二カ月近くあっていなかった。
長い呼び出し音のために一旦電話を切った。
長らく放っておいたため、正輝は他に恋人が出来たかもしれない。
正輝は爽やかな印象を与えるイケメンだ。
そんな正輝に恋人が出来ていてもおかしくなかった。
正輝は若いく、性欲も強い。
いつも私をガツガツ求めてくる。
新しい恋人とセックスしたのかしら?
それともオナニーでを処理したのか?
そんなことを考えている時に、正輝から電話があった。
「どうした、由香里、何かあったのか?」
「何かって?」
「だってお前から電話かかって来るなんて滅多に無いだろう。それに、ここしばらく俺が電話しても出てもくれなかったし」
「ごめんね。今日、会いたいの」
正輝の暫くの沈黙があった。
気になる沈黙だった。
「駄目?」
私はどことなく哀願するような口調になっていた。
「いいよ」
正輝はそう言って、かつて行ったこと事があるカフェと時間を指定した。
午後七時のその街角には、お洒落なブティックやカフェの看板が華やかに林立していた。
会社帰りのサラリーマンやOLで通りは賑わっていた。
その一角に、正輝が指定したカフェがあった。
中に入ると、奥で手を振る正輝がいた。
そして、テーブルを挟んで、若い女が座っていた。
二人はテーブルの前に何かの書類を広げ談笑しながら、数種類のオードブルを前に、小さめのグラスでビールを飲んでいた。
何となく嫌な感じがした。