そのルーカスがさも嬉しそうにパパと酒を酌み交わした。
猛さんが私にも注いでくれた。
「再開を祝してカンパーイ」
流暢な日本語でルーカスが音頭を取った。
乾杯が済んだ後、ルーカスが手短に言った。
彼は、現在宇宙関連企業のコンサルタントを引き受けていて、東京に事務所を構えている。
その延長で、パパの引き入るWWIT社の超小型人工衛星ナノサットとのビジネス提携をしたいという。
「じっくり話を聞かせてください」
パパが親しみを込めてルーカスに言った。
「サンキュー、そして、私の有能な秘書が猛だ」
ルーカスはそう言って、隣のダークスーツ姿の猛さんの肩を抱き寄せ、口づけをした。
あら
私は思わず声を上げた。
唇を離すとルーカスが言った。
「猛は非常に知的で、感性が豊かで、勉強熱心です。ここ二、三カ月で、宇宙ビジネス関連や業界の知識を相当詳しく身につけたんです。そして事務的な手配、段取り、利害分析、交渉等々、MBA並ですよ。彼の中にそんな才能が眠っていたんです」
「褒めすぎだよルーカス」
猛が笑って言った。
私から見ても猛さんは、沖縄で見た時よりも一層、神秘性を増したような気がした。
少し長めの髪が軽くウエーブしている。
沖縄の満天の星の夜を思わせる瞳
贅肉のない頬
微笑む時のすがすがしい唇
何よりもさりげなく漂う気品
ゲイでない私でも惚れてしまいそうだった。
「由香里ちゃん、前よりきれいになったね」猛さんが言った。
「なぜ?」
「なんか、大人の色気が増したみたい」
「大人の色気って何?」
「うまく言えないが、目がすごく深まった感じ。何かをジーっと見据えているような眼だよ。それに唇がとても色っぽくなったみたい。そして肌が前より輝いていると思う。」
「褒めすぎよ、でも嬉しいわ」
「ミスター、キリノ、ユーの愛し方が上手だからだよ」ルーカスがパパにいたずらっぽく言った。