学校から帰ると叔父さんが白いワンボックスカーで待っていた。
その朝、水泳部の活動は止めてすぐ帰ってくるようにと言われていた。
私はきっと森の中に連れていかれるのだと思った。
広い屋敷の隣に1階建の白亜のコンクリート造りのビルがあった。
そこは叔父さんの家が経営する不動産会社のビルだった。
そのビルの前で待っていたのだった。
叔父さんが助手席のドアを開けた。
私が乗り込むとドアを閉め
じゃ、行くよ
そう言って、エンジンをかけた。
夏の午後の気怠い光が前方の街に満ちていた。
この前の写真、入選したぞ!
モデルが良いと評判だった。
お前、由希は素晴らしい被写体なんだぞ!
将来、モデルでも食っていけるぞ!!
叔父さんは少し興奮気味に語った。
私に話しかけているのか、独り言なのか?
その両方だった。
入選したと言う写真は、清楚で少しエロティックな少女というモチーフだった。
タイトルは「エロスの誕生」となっていた。
画像の中で、私は白色の透明度の高い薄いスリップを付けて森の中をさ迷っていた。
森の妖精か?
錯乱した少女か?
そんな意図で撮影されていた。
髪は乱れ、スリップの裾は露になった腿に絡みついていた。
ブラとパンティーは履いていないため、乳首の形や、陰毛の影が見え隠れしていた。
乱れる髪の下で私の目と、赤い唇が浮き立っていた。
その日も、その続編を撮影するということだった。
1時間ほどかけて森に辿り着いた。
山の斜面は西日を受けて輝いているが麓には早くも夕闇が迫り始めていた。
小さなせせらぎがあった。
その縁で車を止め、叔父さんがバッグを差し出した。
今日はこれを着るんだよ
そう言われて、わたしはバッグを開けた。
私は声を息を呑んだ。
それは、犬用の赤い首輪だった。
それだけ、首輪だけ。
後はすべて裸。
・・・
びっくりしなくても良いよ。
これを着ければ君はもっと美しくなる。
さ、ここで、服を全部脱いで、これを着けるんだ。
そう言う叔父さんの目には絶対命令調の光が浮かんでいた。
私は車の影で、叔父さんの熱を帯びた視線を浴びながら制服を脱ぎ、ブラやパンティーを脱いだ。
裸の体を森の冷気が包み込んだ。
皮膚の上を微かに風がそよぐのが感じられた。
生まれて初めて、家の外で全裸になった。
着ていたものと一緒に、私と言う人格も脱ぎ棄てられた。
人格を失った私は
怯えて
震えて
恥ずかしくて
頼りなくて
行き場が無くて
孤独だった。
全裸になって私は叔父さんの前に立った。
私は今にも泣きだしそうな顔をしていたに違いない。
恐がらないで!
素敵だ!
エロティックだ!
妖精だ!
そう言いながら叔父さんは私の首に赤い首輪を取り付けた。
私の首元に、かちゃりと鍵が掛けられ、鎖が繋がれた。
由希ちゃん!!
お前は妖精だ!!
俺のものだ!!
そう言って叔父さんは鎖を引き寄せ、私の唇を吸った。
そうされながら、私は、体の中で何かが蠢くのを感じた。
しかし、その何かは、ざわざわとざわめき、厭らしい息を吐き、ねっとりとした風を起こし、サーっと一瞬で消え去って行った。
陽はいよいよ傾き、遠くで日暮らしがカナカナカナと鳴いていた。