沖縄から帰って八月も終わろうとしていた。
正輝とは二週間に一度程度日曜日に、彼のアパートでセックスしていた。
彼の仕事は、IT企業の広告宣伝部の営業担当だ。いつも、クライアントとの打ち合わせ、開発部門への納品物の制作指示、そして接待など、いつも夜十一時頃まで働いている。
二週間に一度の出逢いは決して多くはないと思う。
正輝お若さだと、二週間の禁欲は辛いものが有るとは思う。
だから、逢うとすぐ、私を半ば押し倒し、スカートをめくり、下着を剥ぎ、性急に私に入ってくる。
そして、激しいピストン運動と、早い射精。
それはまさに、性処理行為でしかない。
射精が終わると、正輝は私の横になり、ひどいときはそのまま眠ってしまう。
私はいつも、快楽を感じること無く、彼に置き去りにされてしまう。
彼とは、学生時代から数えると、五年程度の長い交際になっている。
だから、互いの体やセックスの仕方も、知り尽くしている、あるいは分かり合っていると思う。
ある夜、彼のベッドのシーツの中で、正輝に訊いた。
「私達って、マンネリかしら?」
正輝は興味なさそうに
「きっとマンネリだよ」とそっけなく答えた。
「私とセックスして楽しい?」
「最近、由香里のアナルに刺激を受けているよ」
「それだけ?」私は、けだるく訊き返した。
正輝はそれ以上答えず、私の乳首を舐め、指を陰唇からアナルへと這わせていった。
私の体が機械的に反応し、声が出始めた。
正輝にまさぐられながら、突然不愉快な感情が、身体のどこかららか湧き上がって来るのだった。
何かが、どんどん失われて行っている・・・
そう思い、そう感じた。
私の中に不快な感情の煙が満ちてきた。
やがて、いつものように、正輝は私に被さり、私の脚を開き、私の中に入って来た。
ハッ ハッ ハッ ハッ
正輝が喘ぎ、私も喘いだ。
やがて正輝の腰の動きが速く激しくなり、そして、私の中にザーメンを放出した。
放出した後、正輝は私の横に体を投げ出し
疲れたー
と言って大きなため息をついた。
私は無言で起き上がり、そそくさと狭い浴室へ行って、シャワーを浴びた。
シャワーを浴びながら
パパがいい。
私は呟いた。
そう呟くと、私の心は決まった。
浴室を出て、服を着て、まだ横たわっている正輝に言った。
わたし、帰るわね
正輝はきょとんとしていたが、引き留めはしなかった。
部屋を出て、狭い階段を足早に下りて、駅に向かった。
蒸し暑い八月の夜で、首筋にねっとりとした、湿度の高い空気が纏わりついた。
私は無意識にまた呟いていた。
パパがいい。