140字小説。愛の形。

駅の雑踏の妻の切ない幻影r

2021/04/28

朝のラッシュのコンコース。
人混みの中に前を行く妻がいた。
明るいスカートをはき身軽に何処かへ急いでいる。
おおい
と声をかけようとして止める。
私は十年前に死んでいるのだ。
別次元の妻と私だ。
明瞭に姿は見えるが接触は不可能。
妻は振り向かずに消えて行く。
涙が込み上げてくる。
宇宙的な寂しさ。