愛人契約

愛人契約69.レイプの後の女の痛々しい姿。パパは報復を指示。

2022/07/23

タクシーを降りると、剛一は公園の中へと走った。
公園の中央に噴水広場があり、それを囲んでベンチがと飛び飛びに配されていた。
その端の方のベンチに由香里の姿が確認できた。

駆け寄って声をかけても首を深くうなだれ、顔を隠して、肩を震わせていた。
「どうした、由香里」
剛一がそう言ってかがんで、顔を覗き込もうとすると、由香里は剛一の首に抱き着いてきて大声で泣いた。
剛一は泣きじゃくる由香里の背中を、幼児をあやすように
「よし、よし」
と言いながら何回も優しく撫でた。

鳴き声が少し落ち着いた頃を見計らって、剛一は由香里の髪をかき揚げ、頬を両手で挟んでその顔を覗き込んだ。
公園の街灯の光の中で、ゆがんだ口元と、一筋の血の流れが見えた。
瞼は痛々しく腫れあがっていた。
「おお」
剛一は思わず小さな驚きの声を上げた。

衣服は最低限整えられているとはいえ、ブラウスの胸元は乱れ、中のブラは外され、ジーンズのボタンとジッパーはしまっておらず、髪は乱れていた。
剛一は、由香里がレイプされたことを瞬時で悟った。
「怖かったろうね。まだ痛むかい?」
「痛い!!」
由香里は声を詰まらせながら、泣きながらそう言った。

由香里を抱える様に立ち上がらせ、彼女の腕の下に肩を入れ通りを目指した。
「相手は誰だ?」
歩きながら剛一が訊いた。
「熊谷」
「あいつか」
由香里と初めて会った時、強姦未遂で彼女のスカートの奥にザーメンを放った男だった。

剛一は再びタクシーを拾い、由香里を乗せ、運転手に病院名を告げた。
その病院は、高級シティーホテルのすぐ近くにあり、剛一がプライベートでよく利用する病院だった。
病院は既に外来の受付は締めた様だったが、院長のスマホに連絡を入れ、処置を頼んだ。
タクシーが病院の玄関に着くと、若い女医と看護婦が駆けつけてきて、ストレッチャーで由香里を処置室へと運んだ。

処置室の前のソファーに座って、剛一は雁屋遼介を呼び出した。
「鋼ちゃんか?」
いつもの、少しどすの効いた、親し気な声だった。
「以前、由香里を襲い損ねた男がいたよな」剛一が言った。
「ホステスのバイトしてた時だろう」
「その男、熊谷とボーイが、今夜、由香里をレイプした。」
「何だと!!」
「今、処置室にいるが怪我はそんなにひどくはなさそうだ」
「よかった」
「奴らに、少しお灸を据えてくれ」剛一の語気は強くなっていた。
「当たり前だ。奴の立ち回り場所は以前調べてあるからな。あの時お灸を据えていればよかった」
「そうだな」

二人の会話は短かった。
剛一は、遼介が直ちに、自分の知らない組織に向けて指令を出すだろうと思った。