美希は皆を磯の端に案内した。
そこには小さな桟橋があり、三〇フィート級の白いクルーザーが繋留されていた。
それは昨夜満天の星空の下、猛とルーカス、剛一、由香里の四人を乗せたクルーザーだった。
「ワーー。こんな所にあったの」由香里が驚きの声を上げた。
今朝、そのクルーザーを求めてルーカスは痴呆のようにリゾートホテルのビーチを彷徨っていたのだ。
そのクルーザーが、今ここに有るのだ。
由香里の驚きは尤もだと剛一は思った。
「ルーカスさんに教えてあげればよかったのに」由香里。
「教えてどうなる?」剛一が言った。
そう言われると由香里には返答ができなかった。
「由香里さん、泳ぎの経験は?」美希が訊いた。
「高校の時は水泳部だったの。」
「ヘエーそうだったのか」剛一が感心した。
「だからプロポーションがいいんだ!」遼介が言った。
「でもシュノーケルはやったことがないの」由香里が言った。
「オーケイ。だったら簡単よ。ちょと練習すれば十分だと思うわ。由香里さん」
「由香里と呼んで下さい」由香里が言った。
「じゃ、由香里、私について来て。男子お二人はクルーザーで待っててね。」
「オーケイ。積もる話でもしているよ」遼介が答えた。
磯の淵の潮だまりで美希がシュノーケルの装着を教えた。
由香里は教えられるままに、マスクを顔に当て、縁に髪の毛が挟まらないように工夫した。
海水が入り込んでくるのを防ぐためである。
シュノーケルのマウスピースの咥え方はそう難しくなかった。
マウスピースのいぼのような出っ張りを軽く前歯で噛んで、「ウ」の発音する形の唇でしっかりとマウスピースを咥えれば良かった。
少し練習が必要だったのが、シュノーケルに入った水を吹き出す方法だった。
シュノーケルのクリア、海水の吹き出し法、ブラスト法だった。
全身を海中に沈めて、シュノーケルに海水を入れる。
海水を入れたら水面に浮上する。
お腹に力を入れ尖つた口先から「トゥ!」と叫ぶ感じで勢いよく息を吹き出し、海水を一回で吹き飛ばす。
美希のやり方を真似ながら、由香里はこれを10回程度練習してマスターした。
続いてマスクのクリアや水が入って来た時の対処方法だった。
水泳部でゴーグルの水抜きや曇り抜きはよくやったので簡単だった。
次は足のひれ、フィンを着けた泳ぎ方だった。
まず上半身のフォーム作りから始めた。
美希が分かりやすく説明し、浅い潮だまりで実演した。
胸を張り、顔を斜め前方に向けた姿勢を維持すること。
そして両手は脇腹に軽くつけておくこと。
次いで下半身の動かし方。
膝はできるだけ曲げない。
腰から膝までの筋肉を使い、脚全体で水を打つ感じ。
フィンは足首ではなく、太腿でゆっくりと動かす。
「人魚をイメージして」美希が言った。
首はやや前方を向けておく。
手は体の横に添えておく。
腰を使い太腿と足先が一体となってフィンをゆっくりと上下に動かす。
フィンの威力に由香里は驚いた。
水を押す推力は大きく、脚を少し動かすだけで身体は海中を駆けった。
美希は浅い海の中で優雅に泳いで見せた。
由香里も美希の体の動きを真似て人魚をイメージしながら海中で体をくねらせた。
由香里にとって、海中の美希はまさに人魚だった。
美希は、黒髪を後ろで結んで海になびかせ、腰をしならせ、太腿をしならせ、フィンを上下にはためかせて海中を自在に泳いだ。
海底の砂に手を触れるやいなや、今度は海面に向かって斜めに上昇していく。
途中で体をひねって回転し、また、逆に回転しながら海面に顔を出し、息を吸い、また潜るのだった。
胸の小さなブラと、恥丘の小さな布切れだけが、美希の均整の取れた身体を覆っていた。
全裸に近い美希は、複雑に揺れ動く海面からの日の光に、夢のように照らされていた。
その周りを、亜熱帯の色鮮やかな小魚たちが戯れていた。
同性ながら、由香里は海中でくねる美希の女体にエロスを感じていた。