140字小説。愛の形。

潮騒の中で彼女が言った。さよなら、と。r

2021/04/25

潮騒が満ちていた。
彼女は海流で磨き上げられた美しい流木に腰かけて空を見ていた。
風に乱れる長い髪の中で瞳が僕を射抜いていた。
僕たちの三年の歴史が駆け巡った。
さよなら。
風の中の彼女が言った。
さよなら、僕は答えた。
そしてゆっくりと写真に火をつけた。
彼女は僕を見詰めたまま燃え上がった。