愛人もどき。危険な女二人。

愛人もどき59 M4カービン銃は空砲?何かが仕掛けられている!!

雨脚は一層強くなって来た。
凜はレクサスのトランクにあった備品の中からタンクトップと野戦服を持ち出した。
そしてレクサスの後座席でずぶ濡れになった服を脱ぎ棄てた。美しい身体と形の良い乳房や尻が雨に濡れて光っていた。俺は、彼女がテキパキと野戦服に着替えるのを好色な目でみていた。それを知って、凜は俺に悪戯っ子の微笑を送った。
その笑顔に、俺は本当に凜に惚れてしまった。

タオルで濡れた髪を拭きながら凜が言った。
「奴らはきっと私たちの場所を捉えたわ」
「だから、ここから左折して林道に入り、姿を隠す。そして、山中を大きく迂回して、もう一度竜神スカイラインの南方に合流し、一気に田辺市に入る」
蘭が作戦参謀的に毅然としていった。
「オーケイ」
ブルドッグが頼もし気に蘭を見て答えた。

林道は意外にも舗装され整備されていた。しかし、雨のため、視界は非常に悪かった。レクサスはヘッドライトを煌々と照らして疾走して、樹々の葉群れの陰をひた走った。
ブルドッグの運転技術は大したものだった。
「社長!運転がうまいですね。どこで習った?」俺が訊いた。
「雁屋さん系列の訓練所だ。相当きつかったが、何とかついて行けた」

俺は続けて聞いた。
「凜、あのM4カービンは何なんだ?緑川、彩夏、そして凜、三人とも全然当たらなかったね」
「そうなの、おかしいの、さっき撃った時、距離と言い、タイミングと言い、絶対に撃ち落としたと思った。でも完璧に外れた。」
「でも三人とも外した」
「それがおかしいの」凜が強調した。
そして続けて言った。
「社長、車を停めて」
レクサスが止まると、背後にジープも止まった。
「カービンを撃ってみるから見ててね」
凜はそう言って、レクサスの窓を開け、林道の草むらを掃射した。

ダダダダダ
ダダダダダ

とカービンが唸った。
だが、叢の葉群れは雨に打たれているだけで、銃弾で薙ぎ倒される光景は皆無だった。

「カービンは空砲だったのよ!!」
「何故だ!!」無線機から緑川の声が叫んだ。
「分からない」凜が応じた。
車内に戸惑いの沈黙が流れた。
蘭が無線で緑川に訊いた。
「トカレフには実弾が装填されていたわ。トカレフは何処で入手したの?」
「トカレフは密海寺の倉庫に眠っていたものだ。だいぶ前に雁屋さんから貰ったもので、万が一の時のために仕舞っておいたものだ。」緑川が答えた。
「カービンはこのレクサスに装備されていた。トカレフは密海寺に有ったもの。二つは出所が違うのね」
蘭が言った。
凜が、俺の隣で何事かをしきりに考えていた。

「とりあえず先を急ごう」
俺が言った。それを合図にブルドッグが再びアクセルを踏んだ。

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