挨拶代わりのキスと、美味しい肉、美味しい焼酎のために場は和んだ。
四人ともシースルーのキトンを身に着け、裸体の影をちらつかせていた。
私と美帆さんは、乳房、乳首、臍、恥毛の影を揺らめかせていた。
恭介と裕也は、贅肉のない胸と腹部、そして、二人の股間には身をもたげ始めたの蛇がとぐろを巻いていた。
ファーストキスの後に、セックスへと繋がっていく予感が高まっていた。
そんなクシャルな雰囲気の中で食事は進んだ。
料理とアルコールを味わいながら、それぞれが近況を語った。
恭介は、シャノン監督のヒット作について熱く語った。
人間の味方をする殺人ロボットの映画。
巨大客船の沈没映画。
どこかの惑星で繰り広げられる人類の軍隊と原住民ゲリラとの戦い。
「どれもこれも最後は愛の強さを感じさせるよ」と、恭介は結んだ。
美帆さんはシャノン監督のダンスのセンスに感動していた。
「いきなり、私の手を取ってフォークダンスを始めたのよ」
立ち上がると一メートル九十センチ程の、がっしりした体躯だった。
腕を繋ぎ、ステップを踏み、円を描いて踊った。
「シャノンのリードは上手だったわ。
私は振り回されているだけど、ちゃんとしたダンスになってたの。
悪戯っ子がそのまま大きくなったような無邪気さがあったわ」
裕也は最近の研究成果を分かりやすく語った。
「超群体ロボットなんだ。セルと呼ばれる基体のロボットが何千何万と集まって一つのロボットを構成し、自考自走するんだ。
今は直径二ミリ程度のモデルを基体として、五千個を動かすプロトコルを開発している。
ある命令を送ると、スズメの形を形成し、実際に空を飛ぶんだ。
やっと五十センチまで飛び上がるようになった」
私は、このシャノン作戦を会社のクリエイティブ担当役員の細田と媒体担当役員の根岸に根回しをする計画を話した。
「近いうちに細田役員と会うわ。アポは取ってあるの。シャノン作戦の許可と、徹底した秘密保持作戦の遂行を求める予定よ」
「頑張って下さい、深見由紀子統括ディレクター」
恭介が、仕事上の語調で言った。皆が笑った。
一通り食べ終わった頃、裕也がさりげなく美帆さんのキトンの脇に手を滑らせていた。
夫の掌が形のいい乳房を軽く揉むのが、白いキトンを透かして見えた。
それに刺激されてか、隣の恭介が私の手を取って、テーブルの下の彼の股間へと導いた。
蛇が飢えたように身を固くしていた。
蛇身を軽く握ると、目覚めたかのように鎌首をもたげ反り返り、掌の中で悶え始めた。
掌の中に快楽の予感が電流のように走った。
そして、恭介の手が私の胸をまさぐり始めた。
先日、初めて彼に抱かれた感触を、体が覚えていた。
熱く、それでいてクールで、波のように私を襲ってくる指と唇と舌と蛇の記憶だった。
今、その掌が、私を揉みほぐし、自意識の鎧を解体させようとしていた。
私は軽い酔いもあって、その掌のざわめきの中に引き摺り込まれ始めていた。
向かいでは、裕也が美帆さんの顔に被さる様にして、唇を求めていた。