早朝、ドンドンと激しくドアを叩く音がした。
俺だ
開けてくれ!
謙二の声が叫んでいた。
私は、慌てて玄関に飛んで行きドアを開けた。
ギラギラと目を光らせた謙二が立っていた。
そしていきなり私を抱きすくめた。
抱きすくめながら、唇を吸い、手はパジャマをずり降ろし、せっかちにパンティーに手をかけてきた。
待って
どうしたの?
待って
抵抗する私を抑え込むように、荒々しく私を裸にしてベッドへ運んで行った。
私は大声で叫んだ。
待って!
どうしたの!!
こんなの嫌よ!!
私の叫びで謙二は突然大人しくなった。
自分が何してるのか、不思議がっているようだった。
息が荒かった。
ベッドの縁に腰を降ろし、私を開放し、頭を抱え込んだ。
殺した!
兄貴を殺した!
呻くようにそう言った。
そして、途切れ途切れに語った。
空港、国際線だった。
兄貴は俺たちを見捨てて、カンボジアへ高飛びしようとしていた。
俺は、上からの情報で場所と時間を知っていた。
そして、フロアの隅で隠れて待っていた。
兄貴が、大きなスーツケースを持って現れた。
俺は、匕首を抜き、兄貴に突進した。
兄貴は、何かを叫び、俺を睨んで、崩れた。
俺はそこから逃げた。
そして、ここへ飛んで来た。
私は横に座った彼の肩を抱いた。母親になったよう気分だった。
どうしていいか分からないまま、静かに囁いた。
恐いのね
逃げるの?
恐い
逃げる
どこか、遠くの中東へ。
暫くの沈黙があった。
謙二が言った。
お前が好きだ。
でもお別れだ。
お前が欲しい。
そう言って私に被さって来た。
私は彼を受け入れた。
私は謙二が好きだったから。
私の中で激しくピストン運動しながら、謙二は私の絶頂を引きだそうとした。
私はそれに答えて腰を激しく上下させた。
蛇身が私の蜜壺の奥底を擦った。
私の意識は霞み始めた。
ピストン運動が激しくなってきた。
私は全身で蛇身を感じながら、謙二がどこか遠くへ去っていくのを確信した。
もう二度と逢えないと思った。
体が予知していた。
突然、体の奥底から何者かが言った。
謙二の子を産みたい!
すると、正体の無い、別の声が言った。
俺の子は産むな。
誰か幸せな奴の子を産め。
次の瞬間、謙二は私から蛇身を引き抜くと、暴れる蛇を握りながら私のお腹の上に白濁の液を噴き出した。
その後のことはあまり覚えていない。
突然、玄関が荒々しく開かれ、不気味な男たちがなだれ込んできた。
謙二が鍵をかけ忘れていたの?
瞬間にそう思った。
そして、寝室に乱入してきた黒いマスクをした男たちが、謙二にいきなり発砲した。
謙二は声も出す暇も無く、宙に舞って、そして落ちた。
私は大声で叫んでいたと思う。
謙二の額に大きな穴が開き、血が噴き出していた。
無我夢中で110番をしたことまでは覚えている。
後は完璧に空白となっている。