スワッピング・悦楽の四重奏

四重奏09 夫と、男の妻を裏切った二重の罪悪感r

2021/04/26

激しいオーガズムの後はよく覚えていない。
気が付くと、柔らかな光が満ちる寝室でシーツにくるまっていた。隣を見ると、蝉の抜け殻のような空虚な乱れたシーツだけがあった。

私は不安になって起き上がった。
私の髪には湿り気があった。あの後、私はガラスの浴槽で体を洗ったようだった。
ガラス越しに見える居間で、恭介が電話をかけていた。腰にバスタオルを巻き、鍛えられた背中が美しく見えた。
私はベッドの端に用意されていたガウンを羽織り、居間に入った。
私に気づいた恭介が微笑んで、そして電話を切った。

ゆったりとした広いソファーに腰を降ろすと、彼が傍に寄って来て、美しい顔を寄せて軽く接吻し、挨拶でもするかのように、ガウンに手を滑らせてきて、軽く乳房に触れた。

唇を離して、私は言った。
「あなたは夫の裕也と親友でしょう、裏切ったと思わない?」
恭介はジーッと私を見詰め、暫くの沈黙の後、言った。
「裏切ったとは思わない」
「なぜ?」私は問い詰めた。
「その内分かるよ」
「どう言う事? 」
「その内分かるよ」恭介は同じことを繰り返した。
「でも、私は裏切ってしまったわ」
そう言う私を、恭介はなおも見詰めていた。
私は続けて行った。
「そして、奥さんの美帆さんにも悪いことをしちゃったわ、やっぱり、裏切ってしまったわ」

葉月恭介と美帆夫婦とは年に何回か、私と夫の四人で紅葉の山々をドライブしたり、互いの家に呼んで会食をする仲だった。美帆さんは恭介のプロダクションの専務を務め、ファッションモデルでもある。知的な風貌が三十代の女性に人気が有るようだった。二人は美男美女の典型だった。

「美帆のことも、そう思わなくていいよ」
「どうしてなの?不倫が許されるの?」
「静かに!」
そう言って、恭介は私の唇を彼の唇で塞いだ。甘い舌と唾液が私の口の中で広がり、私は声を失った。
唇を離すと彼が言った。
「今は、何も考えないで」
そう言って、美しい謎のような微笑みを浮かべた。