午前の透明な光がアトリエ一杯に溢れている。
今、由香里はパンティーの下、お尻のすぼまりにアナルプラグを挿入したままアトリエで絵を描いている。
すぼまりに異物の挿入感を感じながら、空の雲の下に夕焼けの赤色を塗っている最中である。
剛一と、アナル開発を約束してから、由香里は早速通販でアナルグッズを探し、どれが良いかはわからないまま、見当をつけて数種類購入した。
いま、パンティーの下につけているアナルプラグは、それこそアナルに栓をするものだ。
プラグの形は鈍感な矢じりのようなデザインで、トランプの立体的なスペードの形をしている。
先端は細く丸くなっていて、中央部はすぼまりを拡張するために太くなっている。
手に持つ側では細くなり、最下部はワイングラスの底の台のような形に広がっていて、プラグがすぼまりから腸に入り込むのを防いでいる。
底のデザインが凝っていて、底を裏から見ると、水晶の多面体のようなカッティングがなされていて、それがきらきらと光を反射するのだ。
これをすぼまりに嵌め込むと、アナルが一つ目になったように見える。
パンティーを履く前に、由香里はプラグ装着した自分のすぼまりを鏡で見てみた。
すぼまりはきらきら輝く一つ目小僧に変身していて、興奮さえ覚えたほどだった。
パパに見て欲しい。
きっと喜ぶわ。
由香里は心底そう思うのだった。
アトリエと言っても古臭いアパートの一室である。
1DKの間取りで、奥の部屋にはベッドとドレッサー、簡易なクローゼットが据えられている。
ダイニングがアトリエであり、壁一面の棚には今まで描き貯めた絵やキャンバス類が半ば乱雑に収められている。
ダイニングの中央には大き目のイーゼルが据えられて、今制作中の十号程度のキャンバスが立てかけられている。
題名はまだ決まっていない。
そのキャンバスには、光と様々な色が絡み合って一つのオブジェが描かれていて、それは巨大な塔に成長しつつある。
雰囲気全体はヨーロッパ中世の宗教画を思わせる色使いだ。
塔は上空の雲を目指しており、塔の遥か下には荒野が広がり、小さな人間の群れがばらまかれ、はるか彼方に地平線が見えている。
見るものを不安にさせる、めまいが襲いそうな空間だ。
剛一と出会った頃から描き始めたが、筆が勝手に動き出していた。
気の向くままに筆を動かしているとこの形になって来た。
雲の空の下の夕映えの赤を塗りながら、突然、由香里は悟った。
この絵は、私のセックスのイメージだ、と。
空に浮かぶ雲は、由香里の花唇である。
下から突き上げて伸びてきている塔はあの貪欲な蛇である。
花唇は今、どん欲な蛇に突かれようとして、真っ赤に燃え上がっている。
蛇は、歓喜に震え、様々な色に染められている。
では、この貪欲な蛇は誰の蛇?
剛一パパか?
正輝か?
私は、本当は誰を愛しているのか?
この輝くアナルプラグ。
このすぼまりの輝く眼は誰に見て欲しいのか?
由香里はあえて答えを求めず、雲の下の夕焼けの赤色を塗り続けた。