愛人もどき。危険な女二人。

愛人もどき20.絶頂の発射を中断され。追手から必死で逃げて。

思わず俺は
逝くーーーーと叫んでいた。
その時だ。
「社長!! 大変や! 」
と、緑川がスタジオに飛び込んで来た。
「なんや」
ブルドッグが怒鳴った。
緑川の後ろから二人のダークスーツの男が飛び込んで来た。
スタジオはパニックになった。
キャーーー
アシスタントの彩夏が悲鳴を上げた。
何もんやーーー
社長が怒鳴った。

あの女だーー
男の一人がもう一人の男に怒鳴った。
ふざけんなーーー
緑川が男に飛びかかって行った
蘭と凜と俺を守ろうとして、カメラマン二人が襲ってくる男に、ぶんぶんカメラを振り回した。
照明係の二人も、ライトの先を命令している男に向けて振り回した。
男がカメラを潜り抜けて俺たちのベッドへと突っ込んできた。
俺は凜の口から絶頂寸前の蛇身を抜き床に転げこんだ。

蘭は俺から飛び降りて、全裸で空手の突きの構えになった。
凜は俺から離れると、やはり全裸で思い切りジャンプした。
凜の脚が光って旋回したと思うと、男の首を横から蹴った。
蘭が、前のめりになった男の胴にバッバッと二発の突きを入れた。
男は後にどうと倒れて転がった。

そのすきに彩夏がバスタオルを俺たち三人に渡した。
「こっちや。付いてこい」
社長が俺たちを別のドアに誘導した。
バスタオルだけを巻いて、蘭と凜と俺はドアから社長に続いて飛び出した。
「緑川、後は頼むでーーー」
社長は走りながら、振り向いて怒鳴った。
スタジオの中で罵声と怒号と何かが壊れる音が入り乱れていた。
とにかく俺たちは社長に付いて走った。

廊下を走り、裏の階段を駆け下り、雑踏する繁華街へ飛び出した。
バスタオル姿の女二人と男一人に好奇の眼が注がれた。
ビルの角を曲がり辻を幾つか曲がると小さな駐車場があった。
ブルドッグがランドクルーザーのドアを開け、後座席に蘭と凜と俺が飛び込んだ。

その時、アシスタントの彩夏が後座席の窓を叩いた。
俺がドアを開けると
「とりあえず、これだけ放り込んで来たわ」
そう言って布製のバッグを車の中に放り込んだ。
「後で電話入れるわ」
社長はそう言って車を発進させた。
バッグの中には、蘭と凜のくしゃくしゃになった可愛くてセクシーな下着と、俺のズボンとが放り込まれていた。
俺はズボンのポケットをまさぐった。
幸いにも携帯と財布があった。

-愛人もどき。危険な女二人。