私は十号。超高級娼婦。青髭の館。

私は十号 06.ブルドッグ 吸血鬼となる。女体の首筋を甘嚙みする。

 

ブルドッグは右手で裸の十号を横抱きにし、左手の掌で乳房を軽く揉む。
 抱かれた十号は目を閉じているがその目尻は薄く開いている。わずか開いた目はブルドッグを見つめているのか、ただ体の機構として開いているだけなのか、彼には分からない。しかし、それが一層彼をそそる。

 舌は、さらに首すじを辿り始める。
 十号は首をのけ反らせ、喉元を無防備にブルドッグに晒している。

 私を食べてもいいわよ……

 ブルドッグには、女体がそう言っているように思われる。

 ブルドッグは部厚い舌を顎から喉元へと降ろしていく。顎の下には柔らかな肉の部分がある。それをを舐め、喉仏へと辿る。
 彼は自分が吸血鬼に変貌していると感じる。
 喉元から女体へと続く汗ばむ首筋が、早く、早く、と彼をせき立てる。

 早く
 早く
 私を……

 十号の、いや、桜子の女体が囁いている。
 首筋の横の筋肉が脈打っている。そのすぐ下を頸動脈が走り、その中を命の源の真っ赤な血がドクンドクンと流れている。

 ブルドッグはそこに歯を立てる。
 甘噛みをする。
 舌先が血管の脈動を感じる。
 血管が歓んでいるのが分かる。
 甘噛みしながらそこに涎を塗りたくる。

 桜子!
 
 ブルドッグは脳裏で呟く。
 かつて何度も何度も桜子の首をこうして味わった。
 その歓びは自分の体の奥底に刻み込まれている。
 いま、桜子は十号となって、腕の中にいる。
 女体は白熱し始めている
 女体を求めて蛇身が身を起こす。

 ブルドッグは唇を首筋から胸元へと移す。張りのある乳房が舌を押し戻す。
 そのふくらみは弾力がありつつも柔らかく、しっとりと汗ばみ、掌に吸い付いて馴染んでくる。

 かつて、ブルドッグは桜子の乳房を愛撫しながら、いつもぶつぶつ呟いていた。

 化身だ、法悦の化身だ。三千世界が桜子に化身している。

 桜子は微かに喘ぎ声を漏らしながらも彼に言った。

 何をぶつぶつ言ってるの。私は桜子。肉の桜子よ。

 今、十号の女体がそう言っている。

 左手で十号を抱きながら、舌は美しいふくらみを交互に味わいつつ、右手は腹部をさすり肉を溶かしていく。ふくらみの上の固い突起を唇に含む。

 あっ、あっ、あっ

 女体の声が三千世界に響き渡る。
 甘く、切なく、果てしなく、ブルドッグの内宇宙へと響く。
 右手の指は臍を撫で、丹田のあたり、女体の不思議、子宮の上を撫で、ゆっくりと股間へと滑っていく。

 太腿がキュッと指を挟み、侵攻を阻止する。太腿は熱を帯びている。しかし、指は太腿の圧力で阻まれながらもさらに内側に侵攻する。

 いゃっ、いゃっ、いゃ

 その声はまさに桜子の声だ。

 指が花唇を割る。火のように火照っている。蜜壺の入り口が蜜に溢れていて悦びで迎え入れようとしている。

 桜子は子供が駄々をこねるように首を左右に振っている。頬から顎にかけて、無駄な肉が無く、爽やかで知的な横顔が可憐で美しい。
 喘ぐ桜子の唇を唇で塞ぐ。
  
 ググッ

 と、戸惑いにくぐもった声が漏れる。
 桜子は、目を薄く開け、祈るように彼を見つめている。歓びに濡れた瞳だ。

 桜子の舌を搦めとり、思い切り吸い込む。桜子の唾がブルドッグの中に流れ込む。まさに桜子の命の樹液だ。

 右手は火照る膣の中に侵攻を続ける。
 柔らかな襞がやはり火照っている。襞は貪欲に、ぷにゅり、と指を飲み込む。いつもは清楚で思慮深く優雅な立居振る舞いの桜子が、いま、貪婪で奔放な女体へと変貌しつつある。

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