私は十号。超高級娼婦。青髭の館。

私は十号 07.指と舌が女体を溶かす

 ブルドッグは首筋から唇を胸元へと移す。張りのある乳房が舌を押し戻すようだ。
 そのふくらみは弾力がありつつも柔らかく、しっとりと汗ばみ、掌に吸い付いて馴染んでくる。彼は桜子の乳房を愛撫しながら、いつもぶつぶつ呟いていた。

 ―― 化身だ、法悦の化身だ。三千世界が桜子に化身している。

 桜子は微かに喘ぎ声を漏らしながらも彼に言った。

 ―― 何をぶつぶつ言ってるの。私は桜子。肉の桜子よ。

 今、十号の女体がそう言っているようだ。

 左手で十号を抱きながら、舌は美しいふくらみを交互に味わいつつ、右手は腹部をさすり肉を溶かしていく。ふくらみの上の固い乳首を唇に含む。

 あっ、あっ、あっ

 女体の声が三千世界に響き渡る。
 甘く、切なく、果てしなく、彼の内宇宙へと響く。
 右手の指は臍を撫で、丹田のあたり、女体の不思議、子宮の上を撫で、ゆっくりと股間へと滑っていく。太腿がキュッと指を挟み、侵攻を阻止する。太腿は熱を帯びている。しかし、指は太腿の圧力で阻まれながらもさらに内側に侵攻する。

 いゃっ、いゃっ、いゃ

 これは十号の声ではない、彼には、まさに桜子の声として聞こえる。
 指が花唇を割る。火のように火照っている。蜜壺の入り口が蜜に溢れていて悦びで迎え入れようとしている。

 桜子はは子供がイヤイヤをするように首を横に振っている。頬から顎にかけて、無駄な肉が無く、爽やかで知的な横顔が美しい。今、桜子は、イヤイヤしながら目を薄く開け、彼を祈るように見つめている。歓びに濡れた瞳だ。
 喘ぐ桜子の唇を唇で塞ぐ。

 ググッ

 と、戸惑いにくぐもった声が漏れる。
 桜子の舌を搦めとる。その舌を思い切り吸い込む。桜子の唾がブルドッグの中に流れ込む。それは桜子の命の樹液だ。

 右手は火照る蜜壺の中に侵攻を続ける。
 柔らかな襞がやはり火照っている。襞は貪欲に、ぷにゅり、と指を飲み込む。いつもは清楚で思慮深く優雅な立居振舞の桜子が、いま、貪婪で奔放な桜子へと変貌しつつある。

 彼の指を求めて桜子の腰が上下に動き始める。太腿はのたうちながら彼の腕を締め付けて来る。
 彼は舌を乳房から下腹部へと移す。柔らかな腹部の表面を縦横に舐めながら涎を塗りたくっていく。腹部がぴくんぴくんと跳ねる。同時に指にまといつく蜜壺の肉襞がキュッ、キュッと締まる。
 今桜子は全身を悦びに犯され始めている。
 桜子が半ば痙攣的に体をくねらせる。
 
 桜子のくねりに伴って、ブルドッグの記憶もくねる。
 ブルドッグは幾夜桜子を痙攣させただろうか?
 桜子はいつも瑞々しく、清楚で、ブルドッグの下で華やかに身をよじった。
 桜子の唇を味わい、乳房を味わい、燃える花唇を味わった。
 花唇を割り、舌を這わせ、桜子の燃える核心部分に何度も蛇身を送り込んだ。

 今、ブルドッグの蛇身が歓び喘ぎ、桜子の脇腹で撥ねる。
 桜子の喘ぐ花唇を求めている。
 しかし、ある夜の桜子の声が突然蘇る。
 そして泣くように懇願した。

 あなた、やめて!
 ありがとう
 ありがとう
 でも、もうやめて!

 幻影のが桜子がブルドッグの侵入を激しく拒絶する。
 幻影の桜子が泣いている。
 蛇身が一瞬にして力を失う。
 ブルドッグが鎮まる。
 幻影の桜子が去り、女体は十号に戻る。

「どうしたの?」
 十号がブルドッグの顔を見上げて不思議そうに訊いた。
 ブルドッグは固く目を閉じ、瞼の淵から涙を滲ませている。

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