私は十号。超高級娼婦。青髭の館。

私は十号 05.生暖かい舌が顔に唾を塗りたくる。

「ああ、十号、ありがとう、俺の桜子!!」
ブルドッグは十号の頭を抱え、愛おしく撫でまわし、そしてショートカットの髪の中に鼻を埋める。
くんくんと髪の中を嗅ぎ回る。

そうだ、この匂いだ、十号、桜子!

ブルドッグは嬉しそうな声を上げる。
ブルドッグの中に、青春のすべてが蘇ってくるようだ。

十号と桜子がブルドッグの中で融合する。
抱いているのは十号か、桜子か?
いずれにしろそれは肉を伴った幻影だった。
いや、ブルドッグにすれば、実体だった。

二十代半ばの桜子と寺の裏で初めて接吻した日。
暑い日だった。
蝉しぐれが降り注いでいた。
唇ではなく、かわいい頭への接吻だった。
微かに汗の匂いがする。
清々しい匂いだ。
いま、同じように、鼻先を十号として蘇った桜子の髪に埋める。

思わずブルドッグはその細い女体を抱き締める。
女体は苦し気に、しかし、楽し気に身をくねらせる。
ブルドッグの腕の中で女体がくねって逃げようとする。
しなやかで、伸びやかで、ブルドッグの腕の中で弾んでいる。
女体が腕を伸ばしてブルドッグの首を抱き締める。

ブルドッグはそれに応えて彼女の唇を吸う。
唇は冷たかった。
ブルドッグは唇に舌を差し入れて、女の舌を絡めとり、唾を啜り、そして吸い込んだ。
今吸い込んでいるのは十号の唾か?桜子の唾か?
どうでもよかった。それは同じものだった。同じ女体だった。
女体の唾は甘く、とろけて、ブルドッグの口腔をみたし、溢れている。

アア、十号、桜子!!

そう呟きながら、唇から舌を離し、今度は瞼の上を舐め始める。
ブルドッグの舌に、瞼の下の眼球の動きが感じられる。
不思議な物体だ。
眼球はころころ動き回り、何かをせわしく探しているようだ。
瞼を透して逆に、眼球に観察されている気がする。
唾が入り込むの抑えるため、魔部tがキュッと閉められる。
その動きが小動物のようで可愛い。

ブルドッグは、今度は目だけでなく、顔全体に涎を塗りたくり、そして味わう。
頬を舐め、鼻梁を舐め、額を舐め、舐めながらすべてを味わい尽くそうとする。
舌が通過した後は大量の涎が残されている。味わうというより、もはや涎による蹂躙であり、貪りに近い。

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