私は十号。超高級娼婦。青髭の館。

私は十号 11.潮風の中でのアクメ

武史が唇を付けたまま翠に被さってきた。
間近で見る武史の顔は海で鍛えられたのか甘さが無い。武骨ともいえる、厳しいアスリートの顔だ。
しかし、端正だ。気品さえ感じられる。今、その瞳は野獣の光で濡れている。

両手で頬を挟み翠の中をのぞき込む。翠は狩られるという予感に襲われる。体の中をぞくっとした電流が走る。
翠は無意識に目を閉じ、武史の首に手を回す。
それを受けて武史が舌を送り込んで来る。

武史の舌が翠の舌を求めて来る。
唇をすぼめ舌を搦めて、翠の唾を吸い込む。透明な液体が樹液のように武史の中に吸い込まれてゆく。

指がガウンの胸元へ滑り込んでくる。
小さな布切れのような水着のブラを手際よく剥ぎ取り、ガウンを引き下ろし、翠を裸にする。
肌を滑る掌ははごつごつと粗い。しかし、指の動きはしなやかで繊細だ。
指は裸に剥いた乳房の横のふくらみを愛でるかのように、優雅に撫で擦る。
翠は乳首が硬くなりピンと立ってくるのが分かる。

武史は一言も話さない。
黙ったまま、手と唇で翠の女体を味わっている。

掌が乳房を丁寧に揉む。今までの感じたことのないスロースペースだ。それがゆっくりとしかし深い快感を乳房の奥から引き出してくる。入念に揉み上げ、翠が微かに喘ぎ始めるのを見計らって唇が乳首を含む。

アッ アハッ

翠が思わず声を上げる。
武史がずるく冷たい目で翠を観察している。野生の雄が雌を仕留める目つきだ。
指ははやがて乳房から腋窩、脇腹へと移っていく。
指が翠の体を滑る度に、先端から快楽の火花がチリチリと弾ける。
翠の手が無意識に武史の股間を探り始める。やがて硬い膨らみへと辿り着く。
指の下で蛇身が怒張している。

「だめだよ。僕は今、必至で我慢している」

武史が翠の愛撫を拒否する。
男に拒否されるなんて、翠にとっては初めての出来事だ。
思わず目を開けて武史を見る。修行僧のような苦し気で真剣な貌がそこにあった。
その顔は切なく、何かに耐えているようである。

「なぜ我慢しているの」
翠は喘ぎながら途切れ途切れに訊く
「もっともっと快楽を高めるために、もっともっとあなたを喜ばせたいために」
武史の目が逼迫しているようだ。

指は腋窩から脇腹を辿り、腹部へと移り臍の周りを優雅に撫でる。翠は自分が快楽の楽器となり、調整され調律されていると思う。

指が水着の紐を解き、布切れを剥がす。
翠の軽やかな恥毛が日に曝される。
思わず太腿を合わせて隠そうとする。指がそれを阻み、股を開かせたまま花唇をなぞる。
2重の花唇が割れ、それに沿って指が滑り、そのうちの一本がニュルと蜜口に侵入する。

あっ あっ あ……っ

翠が短い声を上げる。その声は既に快楽の音色を帯びている。
翠の体は、意思に関わらず指の動きに反応し、撥ね、捩り、反り返り、腰を突き上げ、蠕動し、妖しくのたうつ。声も上がる。まさに悦楽の楽器だった。

来て 来て 来て……っ

翠は喘ぎながら懇願する。
しかし、武史は来ない。
武史が来ないまま、翠の意識は宙に舞った。

武史の指は動きを止めなかった。
もう一本が加わり、2本の指が絶妙に膣の中を擦り、愛撫し快楽のポイントを攻め、襞をなぞり、さすり、奥へ進み、引き返し、また奥を突く。指は十号という楽器を自在に操った。
指の動きと共に、武史の舌と唇が翠の女体を這い回る。

武史の愛撫は万遍なく全身に及び、翠の女体全てが悦楽の響きを奏で始める。
翠はもはや快楽にのたうつ軟体化した不思議な生き物だった。くねくね、ぬめぬめ、とろとろ、だらだら、ぴちぴち、不思議な運動を繰り返す。
やがて大きな声を上げ、体から不思議な液体が噴き出す。

お、 お、 お、 おーっ

武史は軟体化した太腿を大きく広げ、邪魔な布切れを剝ぎ、濡れそぼる花唇に舌を這わす。
翠が、クイクイと腰を動かし、花唇と割れ目を鼻先に押し付けてくる。
武史は、花唇の奥の壺口から溢れて来る蜜の噴出を、音を立てて吸い上げる。

ジュル ジュル ジュル

吸うたびに翠が高い声を奏でる。

ひぃ―― ひぃ―― ひぃ――

そして懇願する。

来て 来て 来て……っ

しかし武史は来ない。
唇で割れ目の先端の肉芽を包む。
肉芽は充血して真っ赤なルビーとなっている。それを舌先で小刻みに突き、悦楽の高まりを加速させる。

いい……っ いい……っ いい……っ

翠は言葉にならない言葉を声高く発する。
体は溶けてソファーに崩れて、うつろな目を必死に見開いている。
しかしその目は何も見ていない。
黒い瞳に空の雲が映っている。

十号、脚を開いて……

武史が耳元で囁きながら、翠が溶けている助手席の背もたれをゆっくりと倒す。
翠の裸体が内からの悦楽で白熱している。
武史が両脚の太腿を抱きかかえ、股間を上向かせ花唇を陽に曝す。
花唇の溝からは透明な液体が煌めいて湧き出ている。
蛇身が花唇を割り、溝を辿り、蜜口を見つけて、ゆっくりと滑り込む。
蜜口は愛液にしとど濡れ、蛇の頭を滑らかに吞み込む。

はぁーっ いい―っ

翠が呻く。
膣の襞が蛇身をキューっと締め付ける。
武史はその強い締め付けに驚き、一層興奮する。
武史が、今までに味わったことのない快感が蛇身から腰へ全身へと走り抜ける。

じっとしてて

翠が必死で武史を見詰めながら囁く。
瞳が歓びの炎に満ちている。
翠は武史と目を合わせたまま、腰は静止させ、膣の内部の襞だけを前後させで蛇身をしごく。
柔らかで、滑らかで、奥深い膣が、蛇身を爆発へと誘導している。
掌によるしごきでもなく、フェラでもなく、もっと重厚で、濃密な快感が蛇身の奥から競りあがって来る。
武史は、必死で耐えていた歓びの噴出を、今、放とうとする。

十号 行くよ!

来て、来てっ!

二人は目だけで熱い会話えお交わす。
翠は武史の首を更に強く抱き締め、武史は翠の背中を抱き締める。
二人の体が互いを求め、融合を求める。

オオオオ……ッ

ああああ……っ

蛇身が激しく白濁の液を放つ。蜜壺がそれを受け止め歓喜して呑み込む。
二人は同時に快楽の頂点に達し、絶頂の彼方へと舞い飛ぶ。
そして静かな時間が流れた。

武史は目を閉じた翠に深々と接吻する。
気品のある美しい女性が穏やかに目を閉じている。

十号……

武史は思わず呼びかける
翠は答えない。

アクメの至福か?

武史は脳裏でつb
武史はコクピットの彼方に目をやった。
蒼穹の彼方で積乱雲が更に大きくなって輝いている。
しかしその底辺は墨を流したように真っ黒だ。
海上では数隻の高速モーターボートが飛沫を立てて遊んでいる。
更にその彼方、水平線の手前でで白い小型漁船の姿が見える。

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