女体の声/掌編小説集

早朝のタクシーの中。泥酔女が精飲。r

2021/04/28

店から無線で呼ばれて、客を迎えに行った。
繁華街の一角にある雑居ビルのホストクラブだった。

いかにもやり手に見える若い男が、泥酔した女を担いで俺のタクシーを待っていた。
後ろのドアを開けると男は女を座席に押し込んだ。
男は手短に女の住所を告げた。
町名までは分かるが、詳しい番地などは、現地で女に聞いてくれと言うことだった。
俺は了解して、ドアを閉め、不夜城のネオンの下を潜り抜けて、高速道路へ入った。

三月の初め、空が明け始めていた。
高速道からはまだ眠っている街々が見渡せ、空には雲の群れが流れていた。
風の強い朝だった。

ルームミラーで後座席の女を確かめた。
女は、曙の薄明の中で体を折って崩れて眠っていた。
歳は三十歳前後に見えた。
横顔は長い髪に覆われたいた。
覗いている口元は可愛かった。
ブラウスの胸元はふくよかに膨らんでいた。
短いスカートがめくれ上がり、黒いパンストの見事な美しい脚が剥き出しになっていた。

一時間ほど走って、高速を降り、指示された閑静な住宅街へ入った。
樹に囲まれた公園があった。俺は公園のそばに車を止めて後座席の女に呼び掛けた。

お客さん
着きましたよ
起きてください
家はどちらですか?

女は
ウーン
と唸っただけで、一向に目覚める気配はなかった。

お客さん
お客さん

俺は声を大きくして何度か呼び掛けた。女はやはりウーンと唸るだけだった。
いやな状況になったと思った。

俺たちタクシードライバーには、泥酔している客の体に触れることは厳禁だった。
まして、女性客ならなおさらだった。
何処か、交番などを探して警官に代わってもらうしかなかった。

俺は車を出て、後座席のドアを開け、さらに大きな声で呼びかけた。

お客さん
起きてください
着きましたよ!!

それでも女は、ウーンと唸るだけだった。
そして、うるさそうに体を捩って、狭い座席の上で寝返りを打ち、仰向けになり、膝を立て、股を開いた。

淫らで、ふしだらな痴態だった。
開いた脚の奥、ミニスカートの奥のパンストから、パンティーが透けて見えていた。
それにしても、若く、はち切れそうな、見事な脚だった。
四十代半ばの俺からしたら、贅沢なほど若く、エロティックで弾力に富んだ脚だった。

俺は、禁を犯して、後座席に体を乗り入れ、彼女の肩に手をかけて強く揺さぶった。
近くに交番らしきものはなく、人影もなく、仕方がなかった。
泥酔した体は重量感があった。
何度揺さぶっても女は起きなかった。

揺さぶる手を止めた時、女が小さく呻いた。

ケンちゃん

と、男の名を呼んだ。

あのねー、と俺が言いかけた時だった。
女が手を伸ばし、俺の腕を捕まえて、強い力で引き寄せた。
俺はバランスを崩し、女に倒れ掛かった。

ケンちゃん

と囁きながら女は俺を抱き締めた。
俺は上から女の顔とまじかに向かい合うことになった。

薄明りの中の女は、整った顔立ちで、苦し気に少し唇を開いて呼吸していた。
閉じた瞼にマスカラが剥がれそうになってへばりついていた。
開いたミニスカートと豊かな胸、だらしないマスカラと、可愛い唇が俺を挑発した。

俺はドアを閉め、試しに、そっと唇に指を当てがった。
冷たく柔らかな唇の感触だった。
すると女が俺の指を口に含み、吸い付いた。
柔らかく、ねっとりした口内の濡れた粘膜が吸い付き、舌が軟体動物のように絡んできた。

俺は一方の手で、女の胸を揉んだ。
熟した女体だった。

うーん

と言いながら、女は脚を閉じたり開いたりしてもがいた。

俺の下腹部は、女の唇の感触と、胸の柔らかさと、贅沢な二本の脚の動きで、怒張し始めた。
俺はついに耐え切れず、ジッパーを降ろし、ズボンの中の蛇を引きずり出した。
蛇身はすでに暴れていた。

蛇の頭を女の唇に押し付けた。
すると冷たい唇が蛇の頭に吸い付き、咥え込んだ。
俺はもう止まらなかった。

蛇身を女の口の奥まで押し込んだ。
女は蛇身に舌を絡めながら、吸い込んだ。
女の口を感じながら、俺はピストン運動を速めた。

エロティックな女体と口の感触と、犯罪者意識のせいで、俺は急速に高まった。
女の頭を両手で固定して、激しく蛇身を出し入れした。

そしてついに俺は爆発し、夥しい精液を女の口内に噴きつけた。
女は夢でも見ているように、俺の白濁の液を、喉で受け止め、何度も飲み込んだ。
女が飲み込むたびに、凄まじい快楽が全身を駆け巡った。

やがて、俺と女は鎮まった。
俺は少し落ち着いてから、女の口元に溢れた精液をハンカチで拭きとり、衣類の乱れを直してやり、身づくろいを整えてやった。
蛇身をズボンの中に収め、ジッパーを引き上げ、座席を離れ、ドアを閉めた。

俺は度胸を据えた。
今の事が発覚したら、確実に俺は逮捕されるだろう、構わん、と自分に言い聞かせた。

そして女のハンドバックの中の財布を開けると、予想した通り運転免許証があった。
女の住所を確かめ、彼女の住んでいる区画へと車を向けた。
女はまだ夢の中を彷徨っていた。