愛人もどき。危険な女二人。

愛人もどき35.位置情報を発信しているのは何だr

2021/04/26

外の雨は降り止まなかった。
雨の中で山並みが煙っていた。

車を停めたまま俺は隣の凜に訊いた。
「なあ、奴らにはどうして俺たちの居場所が分かるんだ?」
「私も今考えていたところよ」
凜が言った。

奴らが追いかけて来た過去を振り返ってみた。
まず、最初、昨日の朝、俺が運転するタクシーのナンバーから営業所を探り出し、そこへ俺の住所を教えろという電話を所長が受けたこと。しかし、その時、所長は俺の住所は教えなかった言っていた。

その後、俺たち三人は3pプレイの後、俺のマンションで眠った。
午後五時頃、凜たちとの連絡人桐野という男から、奴らが所長を脅してマンションの住所を割り出した、すぐに逃げろ、という連絡が入った。
この時点では、奴らが車のナンバーと所長から俺たちの居場所を突き止めたことになる。

待てよ、と俺は思った。
その、桐野という男は、どうやって、所長が脅されたことを知っのか、そして、すぐにも彼らが襲ってくることを知ったのか?
新たな問いが現れた。
それはさておいて、俺は奴らの行動を記憶の中で追いかけた。

桐野の連絡で、俺たちは直ちにマンションを脱出した。
公園の近くでタクシーを待っている時、蘭と凜が襲ってきた一人の男と格闘し追い払った。
タクシーを拾った俺を、もう一人の別の男が俺を引きずり倒した。
この時初めて、俺たちは奴らと接触したのだ。

俺たちはそこを脱出し、複数のタクシーを乗り継いで、大阪城の近くのホテルに逃げ込んだ。
ホテルのルームサービスで焼き肉を食べようとしたとき、早すぎるワゴンの到着に不信を抱いた凜の直感と読みで、奴らが追って来たのを察知した。
俺たちはホテルを退去した。

ホテルを去ってから桐野からまた連絡が入った。
凜は桐野から、スマホを通して、大阪ミナミのブルドッグの事務所へ向かうよう指示された。
俺たちは、ブルドッグの事務所に辿り着き、そこでAVに出演することになり、蘭と凜と俺の3Pの撮影となった。そのスタジオへ奴らが乗り込んできた。
俺たちはそこを何とか脱出した。

そして、今日、ショッピングセンターで奴らにランドクルーザーを爆破された。奴らは俺たちの位置情報を掴んでいたのだ。
つい先ほどは、俺たちは土石流に追われる俺たちを先回りして、、奴らの白いワゴンカーで、土石流に追われる俺たちを待ち受けていた。土石流を危機一髪で避けることが出来て、今ここに至っている。

結果、俺は二つの疑問に行きついた。
一つ、奴らは確実に、何らかの方法で俺たちの位置を割り出している。
どうやって?俺たちの何かが、位置信号を発しているのか?
二つ、奴らが襲う寸前、桐野から避難指示が入っている。何故?

その疑念を凜に話した。
「私もそう思ってたの」凜が答えた。
「奴らが何かを俺たちに仕掛けたんじゃないか?例えば、服やポケットに小型発信機を取り付けたとか?」俺が言った
「でもね」後ろ座席で蘭が言った。
「彼らと物理的接触したのは、あの朝の公園でタクシーを拾った時だけよ」
「そうね、私は一瞬、男の一人に飛びかかられて肩を掴まれたけど」凜が言った。
「その時、何かを付着させられたとか?」蘭が言った。
「でも、その時着ていたブラウスは、スタジオに置いてきたし、今日は、社長の亡くなった奥さんの服を借りて着ているわ」凜が言った。
「私もそうよ。今の私たちの服には何も着いてないと思う」
蘭が言った。

「あなたは?」と、凜が俺に訊いた。
「俺は・・・」

その時の状況を思い出していた。
公園でタクシーを拾い、後座席に蘭と凜が飛び乗った後、俺が助手席に飛び込もうとした時だった。俺は別の男引きずり出された。
それが唯一の接触場面だった。

「その時からずっと履いているのはそのくたくたズボンだ。シャツは社長からの借りものだし」
俺がそう言うと、凜が目を細めて言った。
「あなたのズボンに何か仕掛けられてないかしら?ズボン脱いで!」
俺は慌ててズボンを脱いだ。

凜が、前と後ろのポケットの中、ズボンを裏返しての生地や縫い目等、丁寧に、満遍なくズボンを調べた。
十数分調べた後、
「それらしい物は何も無いわ」と言った。

「ねえ、凜」蘭が後ろ座席から首を出して言った。
「もしかしたら、あのマイクロメモリーから発信されてないかしら?」
「えっ」
凜が驚いたように、蘭を見詰めた。
二人の目に、切羽詰まったような光があった。
「そうかも」凜が言った。
「何だそれは?」俺が訊いた。
すると、凜が耳のあたりをごそごそして、中から小さなカプセルの様なものを取り出した。

サプリメントなどのカプセルを小さくしたような感じだ。太さ五ミリ程度、長さ一センチ程度である。
それを俺に見せて言った。
「カプセル型マイクロメモリーよ」
「私も持ってるわ」
蘭もそう言って、やはり耳からそれを取り出して言った。
二人が俺の掌にそれを置いた。
カプセルは銀色に光っており、俺の手の中で鎮まっていた。
「これが発信機?」
俺は思わず声を上げた。