十一月になった。
レイプされた翌朝以来、由香里は剛一とは連絡をとらなかった。
剛一と会えば、どうしても剛一のためにセックスをしてあげたくなる。
しかし、今の由香里は、それが出来ないのがよくわかっていた。
レイプの後遺症で、男に嫌悪を感じ、怖くさえある。
剛一を愛しているが、身体が拒否するだろうと思った。
街を歩いていも、電車に乗っていても、男たちの股間や手の指が気になるのだ。
気になるというよりも、恐怖さえ感じてしまうのだ。
あのレイプされた時の男たちの息遣いや手の感触、何よりも汚らしい蛇の感触が時折、身体全体を駆け抜けるのだ。
剛一パパだけでなく、正輝とも連絡は取っていなかった。
外に出るのも億劫になり、仕事の打ち合わせがある時だけのたまの外出となっていた。
描きかけのキャンバスをぼんやり眺めているときスマホが鳴った。
パパかしら、一瞬期待する気持ちが横切った。
しかし、相手は美希だった。
「由香里、元気してる?」
沖縄の夏、クルージングやシュノーケルで海を堪能した後、スワッピングとレズビアンプレイをした美希だった。
レイプの記憶で暗くおぞましくなった由香里の心の部屋に、一筋の光が入って来るようだった。
「元気じゃないの」由香里が言った。
「今、東京にいるの、会えないかしら」美希が言った。
「ぜひ会いたいわ」
由香里は自分の心が弾むのが分かった。
待ち合わせしたのは夕方七時ころ。
剛一パパと初めて会ったホテルだった。
ロビーの喫茶コーナーで美希は美しい髪をなびかせて待っていた。
由香里が近づくと立ち上がり、両手を大きく開き、そして由香里をハグした。
由香里の体の中で喜びが弾けた。
「お久しぶり。」美希が言った。
「本当に」由香里が答えた。
「私の部屋でゆっくり寛がない?」
「いいわ」
美希が泊っている部屋から都会の秋の夜空が見渡せた。
晩秋の夜の下で、ビル群のモザイク状の窓の光や、黄金の蜘蛛の糸の様に高速道路の光が幾つもの筋を引いてて輝いていた。
美希は窓際に由香里を誘い、再びハグした。
そして、ゆっくりと由香里の唇を吸った。
美希の舌が唇から侵入してきて、由香里の舌を絡め、そこへ美希の涎が愛液のように送り込まれてきた。
由香里はそれを愛おしく飲み込んだ。
唇を離し、顔を離し、身体を離して、由香里の肩に両手を当てて、由香里の全身を確かめながら言った。
「心配してたのよ。レイプだって聞いて」
その目が優しく、心配そうに潤んでいた。
「ありがとう」
由香里はそう言って自分からもう一度、美希の胸に飛び込んだ。
温かな豊かな胸が、由香里を優しく受け止めてくれた。
「由香里、あなたが欲しいわ」
美希が言った。
「うん」
由香里は短く答えた。
美希が由香里のジャケットやブラウス、そしてスカートをゆっくりと脱がしていった。
美希は、由香里の首筋に唇を這わせながら、胸を揉み、ブラを外し、形のいい小さめのバストを露にし、乳首を吸った。
アア
と、由香里が切なく小さな息を吐いた。
美希は今度は手を由香里のスカートの中に入れ、指をパンストの上を走らせながら、やがて太腿の奥の割れ目を愛撫した。
崩れそうな由香里を、美希はうまく誘導して、広いベッドに横たえた。
美希は仰向けの由香里を裸にすると自分も衣類を素早く脱いだ。
「由香里の体が忘れられなかったのよ」
そう言って、美希は再び由香里の唇を吸った。
唇を吸いながら、美希は掌で由香里の全身を愛撫した。
首筋、乳房、腹、腰、太腿。
太腿の付け根の恥丘、その下の割れ目の奥のクリトリス。
それらを、美希の掌は、かつて愛した由香里の体を思い出すように、優しく、ゆっくりと、しかし適度な力をこめて撫でさすっていった。
柔らかな掌の愛撫と、唇と舌が舐め上げる感触で、由香里は体の内部から快楽がせりあがって来るのを感じ、やがて
ハッ ハッ ハッ ハッ
と切なくうめき声を漏らすのだった。