由香里は、シャワーの後バスローブに身を包んで居間に戻ってきた。
バスローブが緩まないように、由香里は胸元を硬く締め付けていた。
レイプされた後の恐怖と緊張感がまだ残っている様だった。
剛一は寛がすために明るく笑顔で言った。
「おなか減ったね」
「ペコペコよ」
「よし、じゃ、食べよう。由香里の好きな焼き肉だ」
「嬉しい、大好きよ」
「しっかり食べて、元気になって!!」
剛一はここへ来る途中で買った焼き肉弁当を、居間のテーブルに広げた。
公園から車で暫く行ったところにあるホテルの、焼き肉レストランのの特性弁当だった。
そのホテルは、かつて剛一と由香里が初めて夜を過ごしたホテルで、支配人とは昵懇の仲だった。
宮崎県産の特性黒毛和牛という触れ込みだった。
口に含むと、確かに柔らかく、噛めばスーッと喉に通って行くようだった。
既に時間は夜の十時を回っていた。
昼食以降、剛一も由香里も何も食べていなかった。
二人の食欲は旺盛だった。
しっかりと食べる由香里を見て、剛一はもう大丈夫だ、と思った。
好きな焼き肉と少しのウイスキーで寛いだ由香里は、
「とても眠いわ、パパ、先に休みますね?」
そう言って、早々と隣の寝室に移った。
その眠気は、精神安定剤の影響もあるのだろうと、剛一は思った。
夕方からの剛一は緊張の連続だった。
社内の重要な会議を途中で抜け出し、レイプされた由香里を助けに公園にタクシーで急行し、医者に連れて行き、そしてやっと今、食事を終えたところだった。
気が付けば、背広は脱いでいるが、ネクタイをしたままの姿だった。
由香里が寝室に消えた今、疲れがどっと押し寄せてきた。
剛一もシャワーを浴び、バスローブに着替え、居間で軽くウイスキーを飲んだ。
テレビをつけたが、遼介のいうニュースは流れていなかった。
隣の寝室に入ると、ルームライトは消してあるが、都会の夜空に反射する光がベランダから差し込み、微かに寝室を照らしていた。
由香里はシーツに身をくるみ、背中を向けて眠っていた。
剛一は、彼女を起こさないように、静かにシーツの中に身を滑らした。
ウーン
と、由香里が小さく呻いた。
剛一は背後から、由香里の体に手を回した。
手は、自然に、緩んだバスローブの胸元に滑り込み、形のいい乳房に伸びた。
次いで、剛一の蛇は由香里の背中と尻の割れ目を感じて、ゆっくりと硬くなり始めた。
条件反射的に、ほんのわずかだけ腰が動き、蛇の頭が由香里を突いた。
キャー
と突然、由香里は大声を上げ、シーツを撥ねのけベッドを飛び出した。
キャー
と叫びながらベランダ側の全面ガラス張りのドアに身を寄せた。
「ごめん、私だ、パパだ、怖くはないよ」
剛一が大声で由香里に向かって言った。
由香里は、剛一だとわかって、ワーと泣き出した。
剛一は由香里の側にいき、肩を抱き寄せて、背中をさすった。
由香里の身体が小刻みに震えていた。
「ごめん、ごめん、今日は別々に寝よう。パパはリビングのソファーで寝るよ。」
そう言って、由香里をベッドに戻し、シーツをかけた。
すると由香里は剛一に抱き着いて言った。
「そうじゃないの、パパと寝たいの、一緒にいたいの、一人は嫌なの」
懇願する声だった。
「分かった、じゃ少し離れて、手を繋いで寝よう。そうしたら、一人じゃないね」
「うん」
と頷く声は、幼児帰りしたような幼い声だった。