オーガズムの余韻でぐったりしている私を、藤枝専務が抱え上げた。
そして、部屋を仕切っていた襖を開けると、布団が敷いてあった。
藤枝は私を優しく、ゆったりと布団の上に降ろした。柔らかな布団の感触が私を受け止めた。
部屋からは、庭園の新緑の中の、鮮やかな赤やピンクの牡丹が見渡せた。
藤枝は服を脱ぎ、全裸で立って、その姿を私に曝した。
いつ見ても、おぞましい身体だった。
顔は、ボクサー犬の様に頬が垂れ下がり、目はぎょりと見開かれている。
首から胸元そして腹部までは、軽いケロイドが幾筋も走っている。
腰から下が、さらに異形なのだ。
ケロイドで深く捻くれた大腿部。
赤と白の筋と、入り組んだ皴のようなものが足元まで続いている。
蔓のように変成した筋肉が、何重にも骨を巻いているのだ。
所々の蔓と蔓の間には、薄い皮膚を透して血管が見え隠れしている。
人体模型の腰から下のいびつな筋肉模型のようだ。
更に異様なのは、その股間だ。
陰毛は荒れ地の草のようにまばら。
その陰に、切断されたペニスの根元が覗いている。
それは、枯れて縮んだ胡瓜の、委縮した切断面に似ている。
その切断面の下方に小さな穴が開けられ、尿道の役割を果たしてる。
ペニスの痕跡の、さらにその下には、やはり変形し委縮した陰嚢がへばりついている。
私は、身を起こし、ねじくれた腰の皮膚に唇と舌を這わせた。
そして、陰嚢に掌を添え、優しく摩った。
心なしか、委縮して変形しているペニスの根元が、微かに律動したように思われた。
見上げると、藤枝は、そのぎょろ目に涙を浮かべていた。
藤枝はゆっくりと膝を折り、私の前に横たわり、仰臥した。
私は彼の上に被さり、彼がしたように、唇と舌で、全身を舐めた。
さらに、私の乳房とお腹を、異形の身体に擦りつけ滑らせた。
私のエロスを彼に浸み込ませるために。
彼が私を抱きすくめた。
私も彼を抱きすくめた。
健常な男に対しては感じられない、おぞましい、しかし強烈で、煌めく快楽が私の中を駆け巡った。
藤枝専務は、かつての恋人だった。
初めて知った大人の恋と言ってもよかった。
その恋の記憶が、私の体の中に残っているのだ。