私は十号。超高級娼婦。青髭の館。

私は十号 02.銀のマスクの男。至極の指技で私は逝く。

 豪華なホテルの明るい部屋だった。
 ロココ調の部屋で、まさにVIP向けの作りだ。
 壁一面の窓からは午後の都会のビル群が見渡せた。

 十号。分かってますね。
 全てが秘密ですよ。

 往年の元女優、ボスが優しく微笑んで言った。派手な服に派手な化粧だった。

 はい

 翠は頷いた。
 抽象的に十号と呼ばれた瞬間、悦楽を提供する体と心になった。

 いいギャラでしょう。

 はい

 十号は短く答えた。
 確かに凄いギャラだった。
 エッセイのギャラの十倍以上だ。

 助手の夏希も、派手で大胆なミニスカートをはいている
 無駄愚痴は叩かないが、十号はなぜか親しみを感じる。
 夏希はてきぱきと十号を裸にしていく。
 部屋は空調が効いていて、微風が心地よかった。

 夏希が十号にマゾマスクを被せる。
 マスクは十号の視界と顔を奪い、唇だけが外界に露出された。
 そして、紐と小さな布切れだけのブラとショーツを着せられた。
 両手は後ろに回され鎖で縛られた。ベッドに横たえられ、軽くて心地よいシーツをかけられた。

 体に危害は加えないから安心しなさい。

 ボスはそう言って、助手の夏希と共に部屋から出て行った。

 シーツの下で十号は暗闇の中に放置された。
 十号は、それこそ、女体そのものだった。
 暗闇の中で、微かにエアコンが微風を送る音が聞こえている。
 マスクの闇の中で時間感覚が失われていった。
 少し眠ったのだろうか。

 ドアが開けられる音で目覚めた。
 人が近づいてくるのが、気配で分かる。男だ。
 男はベッドに近づくとシーツをゆっくり剥いだ。

 オオ

 小さな驚きの声が聞こえる。
 中年の男の、太い声だ。

 君が十号か。
 高いだけはある。

 男が背広を脱ぎ、ネクタイを外し、シャツを脱ぎ、裸になっていく衣擦れの音が聞こえる。
 やがて、男の指が十号の唇に触れた。
 声に似合わず、華奢で優雅な指の感触だ。
 そして、男は唇を捲り、口の中に指を入れて、歯茎や歯の裏、舌の表裏を撫でまわす。
 愛撫するというよりも、十号の体を触診し検査しているような感じだ。

 いい唇だ。
 綺麗な歯だ。
 血色のいい歯茎だ。
 形と色が良い舌だ。
 一級品だ。

 口の中をまさぐる指は、柔らかく、冷淡で、執拗で、おぞましい未知の生き物だった。

 唇から指を抜くと、いきなりキスしてきた。
 男の舌が十号の口をこじ開け、ぬるりと侵入して来る。
 思わず身動きすると、手を縛っている鎖が

 チャラ チャラ

 と、音を立てる。

 男の舌は十号の舌を捕獲し、絡め取り、十号の唾を吸い込んだ。
 おいしそうに

 チュル チュル

 と、何度も吸い上げる。

 ひとしきり吸い終わると、今度は自分の唾を十号に送り込んできた。
 精液に似た粘液が十号に注ぎ込まれる。

 弄ばれ、唾に侵入されているうちに、十号の体は熱くなって来る。
 口の粘膜に、今まで感じたことのない、襲われる歓びのような未知の快感が湧き上がって来る。
 十号の奥底に隠れていた、快楽に感応する別の人格が現れて来た。

 売春婦の快感?
 ふとそう思った。

 次いで、男は十号を抱き起こして座らせると、唇に蛇身を押し当てた。
 熱く撥ねている蛇の頭が十号の口の中に押し入って来る。
 マゾマスクをかぶった十号の頭を両手で固定して、剥きだされた口に、男は蛇身を出し入れする。
 今、十号は、人肉で出来た豪華な性具だ。
 後ろの手首の鎖が

 チャラチャラチャラ

 と、せわしげに金属音を響かせる。

 男は何度も何度も喉の奥を突いた。
 十号は時折咽いで、呼吸困難に陥った。
 男は容赦せず、突くのを止めない。
 何度も突かれるうちに、十号は自分が肉の管になっていくような気がしてくる。
 それは射精された精液が、ギラギラと流れていく肉の管のイメージだ。

 蛇身は極限まで怒張し、硬い肉棒を血管が取り巻き、血流が激しく流れている。十号の口と舌の中でのたうっている。

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