スワッピング・悦楽の四重奏

四重奏20 浮気相手の男の体。性交場面。その熱い記憶の影r

2021/04/26

あっという間に二週間が経った。
私はガラスで仕切られた自分の部長席で、各種の企画案や予算案の書類に目を通していた。
窓の外は少し霞んだ都会の春の空とビル群が広がっていた。
デスクの固定電話が鳴った。
恭介だった。

「シャノンとの交渉、ほぼ決定だ。あとは貴方と、貴方の会社の正式な決定待ちだ」
「すごい」
「急ぎ、ハリウッドにも行って来た」
「いつ帰ったの?」
「一昨日かな」
「お疲れさん」
「実は、深見も一枚噛むことになった。」
彼が、深見という私の苗字を語る場合は、夫の裕也を指している。
「裕也も? 」
「そうだ」
「その件も含めて、今度の金曜日の夜、スケジュールを空けておいて欲しい、簡単に説明したい。深見にも空けるよう、既に頼んである」
「そうなの、分かったわ、シャノンを最優先するわ」

金曜日のスケジュールを確認すると、夕方はプロジェクト会議、夜は制作局長のお偉方との会食。土曜日は、マーケッターの梶木やアートディレクターとの会議から始まって、媒体局との会議、午後からの想定される撮影シーンのため、湘南海岸へのロケハンだった。

私は、恭介のシャノン作戦を最優先して、片腕の梶木を呼び、金曜日土曜日のそれらのスケジュールを全てキャンセルまたは、スケジュール変更の指示を与えた。

梶木は、眼鏡が似合う学者風の風貌をしている。東京工大で物理学の博士号を取得したが、経営工学に興味を持ち、さらにはマーケティング戦略の面白みに嵌り込み、いつの間にかわが社に在籍している。学生っぽさを残しているが、私より年上の三十一歳だ。
その梶木が、不満感をもろに出し、ぶつぶつ言いながら、私の指示を聞いていた。

彼が何か言いかけた時
「黙って言うことを聞いて下さい。後で訳は必ず話します。あなたもきっと驚く内容よ」
私は丁寧に、だけど暴君的に言い放った。

梶木が出ていくと、スマホが鳴った。
夫の裕也だった。
「恭介から連絡があったよ。金曜日の夜、一緒に来いって。」
「分かったわ」

電話を切ると、意識の奥底で、熱い記憶の影、熱い羞恥の余韻がもぞもぞとうごめき、湧き上がるのを感じた。
恭介の蛇、 恭介の舌、 恭介の指、恭介の体の影がよぎった。

私は彼を求めている? まさか!
私は自問し、頭を振って、恭介の影を振り払った。