「次に座る席を決めさせて頂きます。男女ペアになっていただ来ます。組み合わせは、犬阿闍梨様の命で決めさせて頂きました。」
藤さんはそう言って立ち上がり、前に座っている女を一人ずつ導いては、相手の男の横に座らせるのだった。
その間も犬阿闍梨は声明に和して読経を続けていた。
藤さんは、真矢をブルドッグの横に添わした。
金色の透けた袈裟の下の女体が艶めかしく揺れていた。犬阿闍梨の黄色の透けた袈裟と厳かに調和していた。
犬阿闍梨と真矢の二人の位置に向かって、左奥が俺と彩夏、右隣に浮田と凜のペア。龍の食卓を挟んで、俺の向かい側には緑川と蘭のペアが座った。
配置決めが終わると藤さんは元の位置に戻り、再び大日如来の前の犬阿闍梨と正対した。
藤さんが次のように説明した。
いまから行う、破邪食とは、曼珠子に盛られた食材を食することと、隣のパートナーとまぐあうことです。
行全体は日常の常識と言う邪悪を破壊するという意味で、破邪食と名付けられています。
全て、私たちが食する食材は宇宙の恵みです。宇宙の偉大さ、不思議さ、深さを意識して食べてください。
食し方は自由。そのまま自分で食べても良し、隣のパートナーに食べさせても良し、あるいは食べさせてもらっても良し。
まぐわいは宇宙との交感です。
食べながらパートナーの体を求めても良し。食べ終わってからまぐ合うのも良し。
ただし、その求めて来るパートナーがどうしても嫌な場合は拒否しても良し。
でも、ここでは、できるだけ誰にでも体を開くことが大事です。
体を開き、相手を受け入れ、そして、絶頂を迎えること。性の絶頂感こそ、相手の中の仏を自分の体に受け入れる事であり、仏と融合する歓喜であり、宇宙と融合する歓喜なのです。
それがこの行の目的です。
続けて言った。
浮田さん夫妻は今夜、入信の儀をも兼ねています。
浮田さん夫妻は互いの体を求めなくなって一年近くなっています。
性生活と愛を何とか回復したいという願いで入信の儀を受けに来られました。
最初に、真矢さんは犬阿闍梨様とまぐわい、浮田さんは凜さんとまぐわってもらいます。
その後、浮田さん夫妻でまぐわってもらいます。
それを聞きながら、俺は微かな不満を持っていた。
俺は凜を抱きたかったのだ。
観想の行で凜を犯した。
さっきは、目の前の、水色の袈裟から透ける凜の体に勃起していたのだ。
その凜が、俺の隣の浮田に抱かれる?
しかし、その場の雰囲気は俺の不満を封じ込めるに十分だった。
おれの右隣で彩夏は半眼で合掌しながら藤さんの説明を聞いていた。
白の半透明の袈裟が清々しい。
少し前に傾けたうなじに微かな汗が滲んでいてエロティックに光っている。
こちらから見える横乳は弾けんばかりの若さに満ちている。
目の前の黄金の船に眠っている曼珠の乳房の張りと同じくらい若く見える。
おれは彩夏の向こう側に座る浮田の横顔を観察した。
滝ではよく見えなかったが、渋みの有る中年男である。見ようによってはダンディーで、女にもてるタイプに思われる。
いま、浮田は憂いを浮かべた表情で瞑目し、眠っている曼珠子に合掌している。
浮田の向こう側で、やはり合掌している凜が覗かれる。
鮮やかな水色の袈裟の下の白い腕が艶めかしい。
ちらりと見えるボーイッシュな横顔が堪らなく愛おしい。
しかし、俺は凜を抱くことは、今は出来ない。
藤さんの説明は続いていた。
破邪食を食し、隣のパートナーと一度まぐわった後は、自由交合です。
誰とまぐわっても良し。つまり、乱交です。
俺は乱交と聞いて、俄然やる気になった。
凜ともやれるのだ!!