俺たちが奥の部屋から聞こえてくる女のうめき声を気にしていると。ブルドッグが微笑して言った。
「気になりまっか」
「少しね」
蘭が顔を赤らめて言った。凜は毅然としていた。
俺はと言えば、その切なげな声に、微かにズボンの中の蛇が悶えるのを感じていた。
「観てみますか?」
ブルドックの眼が好色な光を湛えていた。
「案内しまひょ」
俺たちは、事務所の奥の通路に出て、さらにその奥の部屋に案内された。
扉を開くとそこはモニタールームで、十台近くのモニターと幾つかの操作盤があり、一人の男が操作レバーを操っていた。
操作盤の前は全面ガラス張りだった。
ガラス張りの向こうの部屋で、男が女の股間に深々と顔を埋め、濃厚なクンニを行っている最中だった。
そのクンニを二人のカメラマンが追っていた。
「何、これ」蘭が驚いた声を出した。
凜は熱い視線を男と女に注いでいた。
「AVスタジオだす。あのガラス張りはマジックミラーで、向こうからこちらは見えまへん」
さっき事務所で聞いたのはスタジオから洩れてきた声だった。
「監督さんです」
ブルドッグが操作盤に座っている男を紹介した。髪が長く髭を生やしていた。
「桐生です」
男はスタジオに目を向けたまま、ぶっきらぼうに言った。
ブルドッグは続いて、俺たち三人を簡単に紹介した。
「買うて来ました」
そう言って、緑色頭の緑川が弁当を持って入って来て、ブルドッグに渡すとさっさと事務所に戻って行った。
「ま、食べてんか」
ブルドッグが空いている机に弁当を置いた。
「ここの焼き肉弁当はホンマ旨いんですわ。三田牛の極上のヒレ使うてまんねん。遠慮のうどうぞ」
俺と蘭と凜はガツガツと肉にかぶりついた。
弁当と言いながら、肉は分厚く柔らかく、ボリュームもあった。ブルドッグが自慢するのも頷けた。
俺たちは焼き肉弁当を頬張りながら、スタジオ内の濡れ場に見入っていた。
スタジオでは、二人のカメラマン、二人の照明担当、女性のアシスタントの五人が、ベッドの上の女と男を取り囲んでいた。
煌々と照らすライトと、五人のスタッフに囲まれながらセックスする二人は、さすがにプロだと俺は思った。
男は指で女の肉芽を愛撫しながら、舌先を蜜口に出し入れして、溢れる愛液を啜り上げていた。
愛液を啜られるたびに、女は途切れ途切れにうめき声をあげた。
うめき声はだんだん激しくなり、途切れる間隔は短くなり、ついには甲高い悲鳴となった。
男は悲鳴を聞きながら、舌の代わりに指二本で蜜壺を犯し始めた。
肉芽と蜜壺を攻められながら女は腰を捻り、悲鳴を上げ、首をのけ反らせていた。
「この女優はん感度が良うて、何度もイキますねん。人気の女優はんです。」
ブルドッグの解説中にも、女は首をのけ反らしながら、やがて腹部を不規則にビクビクと痙攣させ始めた。
イヤーーー
と女は叫んで声を失った。
カメラが女の顔を追い、アップにした。
女は白目を剥いてオーガズムに達していた。
男は女のオーガズムを暫く観察していたが、やがて女の首を抱え自分の股間に引き寄せ、まだ絶頂の霧の中を彷徨っている女の口に蛇身を挿入した。
女は条件反射的に蛇身を咥え、男は激しくピストン運動を再開した。
女の口の中で蛇身が暴れるのが、女の顔のクローズアップされた頬の形の変化でよく分かるのだった。
男の動きは一層高まったが、途中で男は蛇身を女の口から引き抜き、女を仰向きにして、正常位に移り、腰を振った。
男は蛇身を膣深く挿入し、腰を野獣の様に蠕動させた。
女は腰の動きに合わせて
ハッ ハッ ハッ ハッ
と喘ぎ声を出した。
そのリズムが速くなってきた。
女は目を見開き、男を切なく見詰め、眼を潤ませ、大きく口を開け、乱れた呼吸で男の爆発を待った。
男は一層腰の動きを速め、女の脚を肩に担ぎ、両手で二つの乳房を揉みしだき、あるいは女の腰を引き寄せ、快楽の絶頂を迎えようとしていた。
女は再び
ヒィーーー
と、甲高い声を上げていた。
男は
行くぞ 行くぞ
と呻きながら、一瞬、蜜口から蛇身を引き抜き、女の顔に跨り、自分の手で蛇身に最後の激しいしごきを加え、遂に精液を女の顔に噴射した。
吹き付けた白濁の液は女の顔を汚し、蛇身は女の口の周りでのたうった。
女は暴れる蛇身に唇を寄せ、蛇の頭から蛇身の根元まで咥え込み、まだ続いている精液の噴射を受け止め、喉を動かして飲み込んだ。