悦楽の読書

美少女 墜落のクロニカル 貴島璃世

「美少女 墜落のクロニカル」読ませて頂きました。
素晴らしい作品です。

主人公は美しい。まさに美少女。しかし暗い。
迫力ある数々のセックスシーンの描写。しかし暗い。
最後は海外へ売られるかも知れないという、残酷でおぞましい未来の危機感。
どこまでも暗い。
それが読後の第一印象です。
この暗過ぎる印象が読んだ後一日中付きまといました。

でもなぜか不思議さを感じさせる小説です。
全編、主人公が墜ちていく暗いクロニクルだが、汚れていくのだが、小説は綺麗。文体は綺麗。
客が、蝉を無残に殺すシーンなど、主人公の内面が描写されるが、それも綺麗。
それが第2印象です。

はかなく綺麗。切なく綺麗。その理由を探していて、ふと、エピローグが気になり、何回か読み返しました。
遠い昔、小学生時代のある夏の日の思い出を語る人物。
しかし、この人物はそれ以後、物語には一切姿を見せない。
次の章はいきなり、娼婦の主人公が、「夏がおわったらおしまいだ」という呟きで、夏を受け継ぐシーン。
男に身を犯されながら蝉が殺される場面を描いている。
そこからクロニカルが語りだされる。
不思議な物語構成となっています。
そして、墜ちて堕ちて堕ちた果てに、主人公はつぶやく。
「『君の言葉を文書に残すんだ。インターネット上で。誰かに読んでもらえるようにさ』  その言葉を胸に、わたしは自分のことを書き、それをこうしてあなたが読んでくれているんだよ。」
と。この小説自体が、暗さを描くこと自体が、自由への手がかりではないかと思いました。。
さらには、このSNS呟きの対象が、実は夏の日の遥かな遠い日々、あるいはそれに繋がる人物ではないか、小説の円環を閉じているのだと解釈しました。
特に印象的なのは、自分を語る事で自由になる!という文章です。
これは、小説の根源、書くことの根源に関わる事だと思います。
書くことで自分を取り戻し、取り戻すことで自由になる!
全ての創作活動の根柢にある言葉だと思います。

支離滅裂な感想文となりましたが、それも作品の魅力がなせる業です。
お許しを。
一層の頑張り、期待しています。


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