女体の声/掌編小説集

不倫の高層ホテル。見詰められて。体を差し出し貪られる私。

不倫の高層ホテル。最上階だった。
広い窓際に私を立たせて、彼はじっと見つめた。

会いたかった。

私も。

全部見せて!!

彼が懇願するように、切実に言った。
私への欲望に彼の眼が潤んでいた。
私は服を脱ぎ、下着姿になった。
彼は私の全身を目で舐めまわしながら言った。

下着も、全部!!

私はゆっくりとブラを外し
紫陽花色のパンティーを脱いで足元に落とした。
本能的に手で乳房を隠そうとすると彼が言った。

駄目、手を上にあげて、上で組んで!!

私は両手を上げ、腕を伸ばし、頭の上で組んだ。
乳房とお腹を彼に突きだす形になった。
彼は近づいて来て、私の全身が見え距離を置いて立ち止まった。
私の乳房が彼の息を感じたかのようにプルプルと微かに震えた。

彼はなおも私を見詰めた。
それ以上何もせずにただ見詰めるだけだった。

5分?
10分?

長い時間が流れた。
彼の視線の中で体が次第に熱くなってきた。
長い時間の中で私の全身が震えだした。

アアア

私の体の中から勝手に声が出てきた。
膝が折れた。
体が揺れた。
倒れかける私を彼が受け止めた。

好きだよ

彼が言った。
私はその言葉で焼かれ、身を投げた。
私は神に供えられた生贄のようだった。
神が私を貪る光景が浮かんだ。

-女体の声/掌編小説集