徒然ノート

貴島氏 四宮教授のSM講義 レビュー

貴島氏の小説のタイトル、サブタイトルの付け方はいつも読者の心を揺さぶる。
「四宮教授のSM講義 私は先生の奴隷になります
このくだりで、僕は誘惑の楔を打ち込まれた。

前作の「美獣の檻」「奴隷館」を読んでいるので、今回の準主人公、四宮教授の残酷さは想像できる。
しかし、読んでいない方にも、その残酷さは十分伝わる。
そして、美しい大学生のヒロインはいかに?
エロなおっさんの僕の期待が膨らんだ。

強烈な加虐の描写が展開されるが、なぜかグロテスクではない、美しくさえある。不思議な文体だ。

驚かされたのは、本を閉じる瞬間の、最後の最後の一文。
『参考文献 「青色本」ルートウィヒ・ウィトゲンシュタイン著」』というメモ。

ウィトゲンシュタインとは近代哲学に多大な影響を与えた哲学者で、一般にはあまり知らていない。
どこの何を参考にしたのかは分からないが、貴島氏が広汎な読書家であることが察せられ、作品の魅力の正体が少しわかったような気がする。
性の描写の奥に、存在論が隠されているのだ。

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