愛の煌めき。1分間小説。

駅の雑踏の妻の切ない幻影

朝のラッシュのコンコース。
人混みの中に前を行く妻がいた。
明るいスカートをひらめかせ身軽に何処かへ急いでいる。
おおい
と、声をかけようとして止める。
私は十年前に死んでいるのだ。
別次元の妻と私だ。
明瞭に姿は見えるが接触は不可能。
妻は振り向かずに消えて行く。
涙が込み上げてくる。
宇宙的な寂しさ。

-愛の煌めき。1分間小説。