スワッピング・悦楽の四重奏

四重奏40 ペニスを失った異形の男を、口と乳房、全身で愛撫する

オーガズムの余韻でぐったりしている私を、藤枝専務が抱え上げた。
そして、部屋を仕切っていた襖を開けると、布団が敷いてあった。
藤枝は私を優しく、ゆったりと布団の上に降ろした。柔らかな布団の感触が私を受け止めた。
部屋からは、庭園の新緑の中の、鮮やかな赤やピンクの牡丹が見渡せた。

藤枝は服を脱ぎ、全裸で立って、その姿を私に曝した。
いつ見ても、おぞましい身体だった。

顔は、ボクサー犬の様に頬が垂れ下がり、目はぎょりと見開かれている。
首から胸元そして腹部までは、軽いケロイドが幾筋も走っている。
腰から下が、さらに異形なのだ。

ケロイドで深く捻くれた大腿部。
赤と白の筋と、入り組んだ皴のようなものが足元まで続いている。
つるのように変成した筋肉が、何重にも骨を巻いているのだ。
所々の蔓と蔓の間には、薄い皮膚を透して血管が見え隠れしている。
人体模型の腰から下のいびつな筋肉模型のようだ。

更に異様なのは、その股間だ。
陰毛は荒れ地の草のようにまばら。
その陰に、切断されたペニスの根元が覗いている。
それは、枯れて縮んだ胡瓜の、委縮した切断面に似ている。
その切断面の下方に小さな穴が開けられ、尿道の役割を果たしてる。
ペニスの痕跡の、さらにその下には、やはり変形し委縮した陰嚢がへばりついている。

私は、身を起こし、ねじくれた腰の皮膚に唇と舌を這わせた。
そして、陰嚢に掌を添え、優しく摩った。
心なしか、委縮して変形しているペニスの根元が、微かに律動したように思われた。
見上げると、藤枝は、そのぎょろ目に涙を浮かべていた。

藤枝はゆっくりと膝を折り、私の前に横たわり、仰臥した。
私は彼の上に被さり、彼がしたように、唇と舌で、全身を舐めた。
さらに、私の乳房とお腹を、異形の身体に擦りつけ滑らせた。
私のエロスを彼に浸み込ませるために。

彼が私を抱きすくめた。
私も彼を抱きすくめた。

健常な男に対しては感じられない、おぞましい、しかし強烈で、煌めく快楽が私の中を駆け巡った。

藤枝専務は、かつての恋人だった。
初めて知った大人の恋と言ってもよかった。
その恋の記憶が、私の体の中に残っているのだ。

-スワッピング・悦楽の四重奏