愛人契約

愛人契約25.アナルにプラグを嵌めて街に

由香里は巨大な塔の絵を未完にしたまま午後の街に出た。
或るデザイン会社に依頼されたイラストを納品するためである。

今、アナルのすぼまりにはプラグが嵌められている。
アナル開発のため、しばらくはプラグを嵌めたままの生活を送ろうと思っている。

パパに言わせるとアナルプラグで肛門が広がりはしない。
ただ、
すぼまりを緩めるコツ
すぼまりに蛇を受け入れるコツ
すぼまりで感じるコツ
が習得できるということらしい。
それがアナル開発ということらしい。

「考えてもご覧」
と、パパが初めて由香里のすぼまりに挿入した夜に言った。
「肛門が広がるということは、うんこがだらだら出てしまうということなんだ。
肛門は躰を守るためにもしっかりと作られている。
刃物でも使わない限りちょっとやそっとで広げたりは出来ない。
アナルグッズは、アナルを物理的に変えるものではなく、アナルの感覚を変えるためのモノなんだ」

今、アナルプラグを嵌めて街を歩いていると、パパの言ったことがよく理解できた。
例えば、いつもの道を歩いている時。
ハイヒールが地面を打つ度に、すぼまりの中のプラグが感じられる。
脚を広げるとき、ミニのタイトスカートの下でプラグが動くような気がする。
無意識に、落とさないようにすぼまりを締めつけている。
駅の階段を上る時。
プラグがすぼまりを刺激する。
やはり無意識にすぼまりを締めつけている。
電車の座席に座る時。
プラグが、すぼまりを突き上げ、中を突き上げる。
街角の交差点の赤信号で立ち止まっている時。
後の人にすぼまりのプラグが感づかれないかが気になる。
その時無意識にすぼまりをに力を入れてプラグを締め付けている。
すぼまりは絶えずプラグが挿入されていることを感じ、プラグを締め付け、プラグの大きさにやがて慣れ親しんで来るのだった。

つまり、嵌め込まれて挿入されている感覚が当たり前になり、おそらくパパの蛇を受け入れるのに不要な恐怖心や嫌悪感が無くなるのだろうと、由香里は思う。

午後一時。
デザイン事務所の洒落た会議室で、アートディレクターに作品を見せていた。
長髪で無精ひげを生やし、フランス映画にでも出て来そうな、アンニュイ感のある男だった。
彼がじーっと作品を見つめ評価してる時間が長く感じられた。
由香里は、椅子の上で、アナルプラグがすぼまりを刺激しているのを感じていた。

作品は、赤い唇をクローズアップして、すこしエロティックに仕上げた女性の横顔だった。
何処かのスイーツの広告に使うイラストだった。
「いいね。これで行こう。ありがとう」
ディレクターがOKサインを出した。
会議室を後にして別れ際、廊下でディレクターが言った。
「蒼井さん、作品が最近色っぽくなって来たね。何かあった?」
「え?」
由香里は一瞬戸惑ったが
「何もありませんよ」
と、笑って否定した。

デザイン事務所を出ると夏の午後の気怠い光が街を焼いていた。
「私から何かが出ているのかしら? 色気? オーラ? フェロモン? アナルプラグのせい?」
由香里は自問した。
無性にあののたうつ蛇が欲しくなった。

誰の蛇?
パパの?
正輝の?

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