スワッピング・悦楽の四重奏

四重奏25 夫婦交換はまずお食事から。r

2021/04/26

美帆さんと居間に戻ると、夫の裕也が私を抱き寄せて言った。

「そんなに怒った顔をしないで。スワッピングを言う機会を逃しちゃったんだ」
裕也は困った顔をしていった。
「嘘! ずっと隠していたんでしょ、騙したんでしょ」
「騙すつもりじゃなかった、ちょっと驚かそうとは思った」

すると裕也は私の頬を両掌で包み、唇を重ねた。
冷たくて熱い舌が私をなだめた。
唇を離して、裕也が言った。
「お前を愛してる。お前の全てを愛してる。信じて」
私は、真剣にそう言う裕也を見詰めた。

その時、玄関のチャイムが鳴った。恭介が出た。
予約していたルームサービスの料理が届いたのだった。
「パントリーに置いておきます」チャイムの声がそう言って、消えた。
恭介と美帆さんが、居間を出て玄関横のパントリーからキッチンワゴンを運んできた。

ワゴン全体は猫脚型の曲線のある脚に支えられ、天井と、中の棚はセラミックのトレーや鍋で、華麗な文様が描かれていた。
それらには、カットされたステーキやチーズ、パンや穀類、野菜類、スープ類がそれぞれの器やポットに収められ、前菜などはすでに盛られていた。

恭介が、居間の横のダイニングテーブルにワゴンを寄せた。
裕也がテーブルの真ん中に、それらの料理を並べた。
美帆さんが、大小の銀の皿を四人分、手際よく配した。

「パーティーはまずはお食事からだ」恭介が言った。
「由希さんはこっち、俺の横。美帆はそっち、深見の横」
恭介が、夫婦入れ替わって座るように、私と裕也に、背もたれのある王朝風の椅子をそれぞれ指定した。
私は無意識に助けを求めるように、夫の裕也を見た。裕也は、行っておいで、とでもいうように微笑んだ。

「さあ、こちらへ」
恭介が私の手を取って、隣の椅子に導いた。
手が触れた瞬間、私の体の中に電流が走った。
私は無意識に、恭介に抱かれる事を期待していたのか? それは恐れか? 歓びか?
分からなかった。

テーブルを挟んで、私の前に美帆さん、恭介の前に裕也が座った。
ダイニングから見るベランダは、優しい光でライトアップされ、その向こうには、都会の黄昏が広がっていた。

美帆さんが、私たちに小さなグラスを配り、恭介がそれにシャンパンを注いだ。
「では、シャノン監督作戦成功を祝して、乾杯」
恭介がグラスを掲げた。
私もぎこちなく、その乾杯に従った。
「では、制作統括兼総合ディレクターの深見由希さん、一言を」

恭介はいきなり私に振って来た。
私は瞬時に覚悟を決めた。
やってやる! と。
私はスタッフや部下達とのパーティーでよくやるように、立ち上がり、グラスを掲げて言った。
「皆さん、ご苦労様でした。私たちの才能とパワーと人生に乾杯!」

恭介が、裕也が、美帆さんがシャンパンを口に運んだ。
私も一気にシャンパンを飲み下した。
甘さを抑えたシャンパンだった。

私たちがいるダイニングルームの奥の壁は鏡張りだった。
その鏡の中で、シースルーの空色の絹のキトンに身を包んで、片手を上げている私がいた。
上げた腕の下の脇に、乳房の横の膨らみが弾んでいた。

皆が私に拍手を送った。
椅子に座ると、恭介が言った。
「今夜は宜しくお願いします」
恭介は仕事の現場の口調で言った。
そして私を抱き締め接吻してきた。
胸が高鳴るのを感じていた。
夫の裕也が私を見詰めていた。
その視線がエロスに潤んでいるようだった。