女体の声/掌編小説集

鈴の音(05)見つめながら、膣だけを動かし、しごき上げ、射精させる女体。r

2021/04/28

夏の終わりだった。
強い日差しの中でプールの面に水しぶきが上がっていた。
伸びやかな美しい流線型の女体が見え隠れした。
真っ青の生地に向日葵が纏う競泳用水着だった。
水に濡れて輝く肢体がなまめかしかった。

マスターズ水泳協会の大会に向けての自主トレだった。
二〇〇メートル自由形の種目で、上位三位を狙っていた。

僕は教授と共に、プールサイドの大きなパラソルの日陰で、軽くウイスキーの水割りを飲んでいた。
クラッシュした氷が、ウイスキーのスピリッツを引き締めていた。
木製のテーブルの上には、果物やナッツなどの摘まみと幾つかののアルコールが添えられていた。
そして、ビデオカメラと、それにつながった小型モニターがあった。

先日、僕は女豹となった彼女を教授と二人で犯した。
それ以後、僕と教授と女の間柄はこの上なく親密なものとなった。
小さな性的コミュニティーと言っても良かった。

今、画面には、僕と彼女が濃厚なキスを交わしているシーンが映っていた。
どうやってこんなビデオを撮影したのか僕にはわからなかった。
衝撃だった。

僕は、目を閉じた彼女の唇に舌を侵入させ、彼女の舌を絡めていた。
手は、薄く軽いタンクトップの中の乳房を愛撫していた。
ベランダのソファーの上だった。
遠くに、八月の初めの山並みが蒼穹の下に広がっていた。

どぎまぎしている僕に向かって教授が語っていた。

俺は、君と妻の関係を知っていたよ。
と言うよりか、妻が、君との関係を告白し、且つ、それを認めて欲しいと頼んで来たんだ。
俺は、即オーケイしたよ。
条件は、君たちのセックスシーンを盗撮することだった。

場面が変わった。
寝室だった。
対面座位で、僕と彼女は向き合って抱き合っていた。
彼女の裸に横乳が美しかった。
二人の結合した腰のあたりが微かに揺れているだけだった。
僕の蛇身は深く突き刺さっているのだが、カメラから見る彼女はほとんど腰を動かさなかった。
実はこの時、彼女の膣だけが動いていたのだ。

蛇身を飲み込んだ蜜壺は、膣を自在に操って、締めたり緩めたり、前後に蠕動運動していた。
膣は蛇身を吸い、吐き、舐め、咥え、纏わり、貪欲に子宮の奥へ誘い込んだ。
俺は彼女を抱きしめ、助けを求める様に彼女の唇を吸った。
彼女も僕を抱きしめ、キラキラ光る眼で僕を見詰めていた。
僕が何か言いかけると
シッ
と、言って黙らせた。

見つめ合ったままの静かな時間が流れた。
しかしねっとりとした膣が蛇身をしごき上げるのだった。
やがて僕は、執拗で貪欲な膣の動きと愛撫の中で激しく射精した。
二人の胸元の小さな金の鈴がチカチカ光り、共鳴して微かな音を立てていた。
無言で見つめ合いながらのセックスだった。
深い感動と親密感が僕を襲った。
初めての体験だった。

良かったかね?
ビデオを見ながら教授が言った。
あの技術は、俺が五年以上かけて妻に仕込んだものだ。
それ以外にも色々、彼女を調教し開発し磨き上げてた。

モニターは別のシーンを映していた。
リビングをよぎるパジャマ姿の女。
庭を散歩するショートパンツの女。
何の変哲もない日常の風景だった。
時々カメラを覗き込む彼女は、この上ない幸せな表情を見せていた。

別のシーンが映った。
リビングだった。
教授はソファーの上で女のスカートを捲り上げ、両脚を持ち上げ、蜜口の下のアナルのすぼまりを舐めていた。
指は、肉芽を弄んでいた。
やがて、教授はすぼまりの中に暴れる蛇身を沈めて言った。
はだけたシャツから乳房が覗かれた。
胸元ではあの小さな鈴がチカチカと、僕に向けて信号を放っていた。
女の顔が、切なくカメラを見詰めていた。

教授の説明よれば、この別荘にはあちこちにビデオカメラが備えられていた。
三六〇度撮影可能な可動式だった。
防犯というよりも、女の姿態を様々な角度と視点から映すためだった。
高解像度で自動焦点、設定によれば、対象物を自動追尾することもできた。
更に、映像データはインターネットに接続されていた。

つまり
教授は続けた。

インターネットを介して、俺は、ニューヨークにいても、カメラを操作し彼女を追い、観たり録画することができるのだ。
君たちの愛の場面も、しっかりと録画せてもらったよ。

教授は、グラスを俺にかざして、微笑んで乾杯の仕草で、美味そうに飲み干した。
プールに目をやると、女がプールサイドに上がったところだった。
キャップを取ると美しい髪が肩へ流れ落ちた。
女は僕たちの方へ歩いてきた。

堂々とした、鍛え上げた四肢と体幹が眩しかった。
光が弾ける肩と胸元。
鮮やかな青地に走る向日葵の柄。
腰まで切れ上がったハイレグの水着と、輝くボディーラインと太腿。
思わず目をやってしまう股間と恥丘の膨らみ。
女体は今、美しい戦闘を準備していた。

綺麗だろう。

教授が言った。

あの美しさが俺の毒だ。
俺の幻だ。